≪序文から≫
今年は「明治150 年」であると同時に、「平成」も来年には改元となる区切りの年に当たり、また、2020 年には「東京オリンピック・パラリンピック」の開催を控え、各分野において、近代日本が歩んできた軌跡の中の「光」と「影」の部分の双方を「等身大」に総括し、未来に向かって生かしていこう、という気運が盛り上がっていることと思います。
海運の世界では、日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船三社が共同で設立した定期コンテナ船事業会社「オーシャン ネットワーク エクスプレス」(ONE)が本格的に始動し、久し振りに業界地図に変化がありました。
さて、今号では、2 つの指定テーマに対して8 編の応募があり、自由テーマも含めて11編を掲載することが出来ました。昨年度より、応募論文を対象に「査読」を導入しましたので、執筆者並びに査読者の皆様に多大な労力をおかけしましたが、それだけに充実した内容になっていると思います。また、「研究論文」のほかに「研究ノート」、「活動報告」も併せて掲載しています。関係各位に心から感謝申し上げる次第です。
「指定テーマ1:海運・港湾と地方創生」では、2 編の研究論文と1 編の研究ノートを掲載致しました。水野氏の「地方港湾への外航クルーズ客船の寄港による地方創生」では、今や九州の主要港だけでなく、全国の各港に広がりつつあるクルーズ船の寄港が、地方創生に与える影響について総論を述べて頂き、次の亀山氏・佐伯氏の共著「北九州港ひびきコンテナターミナルに寄港したクルーズ船の船員の観光行動の規定要因」では、業務による訪日とはいえ、結果的にリピーターである船員の観光行動の中にも「モノ消費からコト消費」への志向の変化が見られることが指摘されています。また、行平氏の「愛媛県と大分県を結ぶフェリー航路を活用した地域振興」では、フェリー航路の到着港である臼杵港の利用客を、どうしたら地元・臼杵市内の観光地に誘客出来るかについて、知恵を絞った記録が記されています。
「指定テーマ2:海事教育の現場から」は、2017 年3 月末に公示された小・中学校の「新学習指導要領」で、長年、海事関係団体の念願であった、海事産業が果たす重要な役割について盛り込まれたことを受け、1 編の研究論文と4 編の活動報告を掲載致しました。先ず最初に、木村氏の研究論文「小学校社会科における海運教育の変遷と今後の課題」で、戦後の社会科において「海運」が、学習指導要領で如何に位置付けられ、教科書に如何に記述されてきたかの変遷並びに今後の課題について述べて頂きました。木村氏の言われる通り、外航海運は「グローバル化する国際社会」について学習する際の格好の素材であり、今後の社会を担う子供達に、海運に対する理解が育っていくのは楽しみです。続いて、木村氏と協力して教材作りに励んでこられた村上氏が、「海洋国家日本の社会科の在り方を問う」で、地元尾道糸崎港が世界と如何につながっているかを生徒に気づかせることを通して、我が国の港湾の課題を捉えさせようとした授業の記録が公開されました。さらに、郡司氏は、歴史的に多様な輸送手段が併存している北海道・函館の地において、輸送手段が多様化する現代における「海上輸送の役割や可能性を追究する単元の開発」というテーマに生徒たちとともに取り組んだ報告をされました。さらに、古賀氏は「持続可能な開発のための教育(ESD)としての海洋教育の推進」において、校区にある世界文化遺産(明治日本の産業革命遺産)である「三池港」が、石炭産業を中心とした市の発展に果たしてきた役割を振り返るとともに、これからの持続可能な社会構築のために自分たちに何ができるかについて、考えさせる授業について報告をされました。最後に、後藤氏と猪野氏は、「南陽市海洋キャリア教育セミナーの報告」において、海を見ることの少ない内陸地・山形県南陽市で、2016 年以降毎夏中学2 年生を対象に開催された、「海洋キャリア教育セミナー~海の仕事へのパスポート~」の開催に至った経緯と内容についての報告をされています。
この「海事教育の現場から」の各編については、是非、全国の小・中学校の先生方にもお読み頂き、参考にして頂きたく、今後、各チャンネルを通じて、先生方からアクセスが可能となるように努めていく所存です。
次に、「自由テーマ」としては、2 編の研究論文と1 編の研究ノートが寄稿されました。
神田氏の「海洋プラットフォームの周辺海域における航行の自由」では、今後、日本でも活発化していくであろう海底資源開発の拠点となる「海洋プラットフォーム」の安全とともに、周辺を航行する船舶の安全をいかに確保するかについて、法律面を含めた考察がなされています。また、長谷氏の「日本の海運に係る環境政策の策定過程とその対応」では、最近の日本政府の海運に係る環境対策、特に温暖化対策及び大気汚染対策の策定に当たって、如何に科学的知見は踏まえられたのか、その政策立案過程について述べられています。最後に、高橋氏は、「共同海損法の日中台比較」で、共同海損の国際的約款であるヨーク・アントワープ規則に加え、これを参照して各国の法規を改正することが潮流となっていますが、その対応について一部、日・中・台湾において異なる部分があることを指摘しています。
さて、来年度の指定テーマには、「近代化以前の海上輸送と物流」と「自律運航船技術の開発進展状況について」という「過去」と「未来」の対照的な2 つのテーマを選びました。
私どもの生きている「今日」のこの場は、時間的には、過去、そして未来へとつながっています。同時に、空間的には、海を介して、世界中とつながっています。物事を見る時、身の回りの事物や人の動きが、時間的に、或いは空間的に、どのように、過去・未来や、世界とつながっているのか、自分達の今のやり方が、本当にベストなのか、他の社会ではどうなのか等について、興味をもって見つめることが大切だと思います。
最後に、今号も無事にこのように多彩な論文等を皆様にお届け出来ることに感謝すると共に、来年度も、広い視野に立った海事関連の論文等が多数寄せられることを期待しています。
2018年12月
一般財団法人 山縣記念財団
理事長 郷古 達也
12月19日発行後、海事関連の研究者の皆様や企業、団体並びに公立や大学の図書館に配本しました。配本先図書館等は、こちらからご覧ください。
なお、お手許にお取り寄せご希望の方は、下記の「お問い合わせフォーム」から、またはお電話にてお申込み下さい。
また、本誌をお読みになってのご感想・ご意見なども是非お寄せ下さい。
一般財団法人 山縣記念財団
お問い合わせフォーム
TEL(03)3552-6310
≪目次≫ |
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序文 |
郷古 達也 |
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【指定テーマ1 海運・港湾と地方創生】
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≪研究論文≫
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地方港湾への外航クルーズ客船の寄港による地方創生
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水野 英雄 |
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北九州港ひびきコンテナターミナルに寄港したクルーズ船の
船員の観光行動の規定要因 |
-Norwegian JoyとCosta Serenaの事例から-
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亀山 嘉大・佐伯 直克 |
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≪研究ノート≫
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愛媛県と大分県を結ぶフェリー航路を活用した地域振興
-大分県臼杵市の事例を中心に-
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行平 真也 |
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【指定テーマ2 海事教育の現場から】
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≪研究論文≫
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小学校社会科における海運教育の変遷と今後の課題
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木村 博一 |
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≪活動報告≫
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海洋国家日本の社会科の在り方を問う
-「世界につながる尾道糸崎港」授業紹介-
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村上 忠君 |
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海上輸送の役割や可能性を追究する単元の開発
-中学校社会科・地理的分野における授業実践を通して-
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郡司 直孝 |
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持続可能な開発のための教育(ESD)としての海洋教育の
推進 |
-世界文化遺産「三池港」を中心とした学習カリキュラムの
作成と実践を通して-
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古賀 正広 |
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南陽市海洋キャリア教育セミナーの報告
-内陸部での海洋教育の導入と実践-
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後藤 祐希・猪野 忠 |
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【自由テーマ】
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≪研究論文≫
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海洋プラットフォームの周辺海域における航行の自由
-オーストラリア北西方海域を事例として-
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神田 英宣 |
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日本の海運に係る環境政策の策定過程とその対応
-地球温暖化対策及び大気汚染対策に係る科学的知見の
活用を中心に-
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長谷 知治 |
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≪研究ノート≫
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共同海損法の日中台比較
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高橋 孝治 |
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※≪研究論文≫は、査読付き論文です。
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≪執筆者紹介≫
(掲載順)
水野 英雄(みずの ひでお)
名古屋大学大学院経済学研究科博士課程後期課程経済学専攻退学。愛知教育大学教育学部助手、講師、准教授を経て、現在、椙山女学園大学現代マネジメント学部並びに大学院現代マネジメント研究科准教授。専門は、国際経済学、経済政策、貿易政策、教育政策、経済教育で、海事関連では「アジアにおけるクルーズ客船市場」を研究テーマとし、主要論文に「中部地域の観光産業における名古屋港の役割-クルーズ客船による経済波及効果-」、「日本へのクルーズ客船の寄港とカボタージュ規制」(当誌第65 集、2016 年)があるほか、農産物貿易、経済教育や教員養成などに関する多数の著書、論文、研究・教育活動がある。2013 年第1回経済教育学会賞(教育実践部門)受賞。所属学会は日本経済学会、日本経済政策学会、日本国際経済学会、経済教育学会、応用観光研究会、日本観光学会、日本港湾経済学会、日本クルーズ&フェリー学会など。
亀山 嘉大(かめやま よしひろ)
中央大学経済学部卒業。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学博士(経
済学)取得。国際東アジア研究センター研究員、香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)准教授、佐賀大学経済学部准教授を経て、現在、同大学教授。専門は都市経済学、交通経済学、近年は民間資本を活用したクルーズ船拠点港形成に関する経済分析、人口減少時代における災害復興と地方創生に関する空間経済学を手掛ける。その他、高知新港振興プラン検討委員会座長を務める。近著に『復興の空間経済学-人口減少時代の地域再生-』(共著)、論文に「中四国・九州地域における自動車部品供給企業の生産性と輸送を含むマーケットポテンシャル」(2018 年第27 回日本海運経済学会賞(論文の部)受賞)、「佐賀空港におけるインバウンドの拡大とLCC 利用者の旅行行動」がある。所属学会は応用地域学会、日本海運経済学会、日本交通学会、East Asian Economic Association など。
佐伯 直克(さえき なおかず)
福岡大学法学部経営法学科卒業。鶴丸海運㈱に入社後、港湾荷役、陸上運送等の業務に従事。同社退職後、北九州市役所に入職。産業学術振興局商業振興課を経て、港湾空港局物流振興課、港湾空港局港営課でポートセールスの業務に従事。現在、港湾空港局クルーズ・交流課に所属し、クルーズ船の誘致に従事している。その他、シンガポールや香港のクルーズ拠点港の調査訪問を実施している。
行平 真也(ゆきひら まさや)
長崎大学水産学部水産学科卒業。九州大学大学院生物資源環境科学府修士課程中途退学。大分県入庁。水産振興課、農林水産研究指導センター水産研究部を経て、中部振興局農山漁村振興部において3 年間、臼杵市の水産業普及指導員として水産振興、地域振興に関わる。和歌山大学より博士(工学)を取得。大分県庁を退職し、大島商船高等専門学校商船学科助教に就任。現在、同准教授。専門分野は「海を活かしたまちづくり」。臼杵市市政アドバイザー。愛媛県西伊予・大分中部地域間交流促進協議会アドバイザーなどを拝命。著書として『魚で、まちづくり!大分県臼杵市が取り組んだ3 年間の軌跡』がある。2014 年日本航海学会奨励賞受賞。所属学会は日本航海学会、日本沿岸域学会など。
木村 博一(きむら ひろかず)
広島大学教育学部卒業。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程修了。
愛知教育大学助手、助教授、広島大学学校教育学部助教授などを経て、現在、広島大学大学院教育学研究科教授、広島大学附属三原幼稚園・小学校・中学校長。博士(教育学)。専門分野は社会科教育学。社会科教育史研究、社会科授業開発研究などに取り組んでいる。主な著書に『日本社会科の成立理念とカリキュラム構造』、『農業を学ぶ授業を創る』、『「高齢者福祉」を学ぶ授業づくりの探究』、『社会科教材の論点・争点と授業づくり 第2巻 “グローバル化”をめぐる論点・争点と授業づくり』などがある。所属学会は全国社会科教育学会(副会長)、日本社会科教育学会(評議員)、日本教科教育学会(常任理事)、日本グローバル教育学会(理事)、日本教育学会、日本カリキュラム学会、日本教育方法学会など。
村上 忠君(むらかみ ただきみ)
神戸学院大学法学部法律学科卒業。因島市立土生小・田熊小教諭、広島大学附属三原小学校教諭,府中市立北小学校教頭,尾道市立原田小学校教諭を経て、現在、広島大学附属三原小学校契約教諭。研究教科は社会科。研究テーマは「海から観た社会科」。広島大学大学院教育学部教育学研究科 木村博一教授とともに教材開発を進める。主要論文は、「国際的資質を育てる小学校社会科歴史学習~「ノルマントン号事件」と「エルトゥールル号の遭難」を事例として~」。2010 年経済産業省資源エネルギー庁エネルギー環境教育情報センターの依頼を受け、原子力発電に関する教材開発及び実践内容を講演。「平成26 年度エネルギー教育モデル化推進委員会ワーキンググループ」委員(日本科学技術振興財団)。木村教授と研究サークル「教職人の会」を立ち上げ人材育成にあたる。所属学会は全国社会科教育学会。
郡司 直孝(ぐんじ なおたか)
北海道教育大学教育学部函館校卒業。北海道教育大学大学院教育学研究科修了。修士(教育学)。長万部町立長万部中学校教諭、鹿部町立鹿部中学校教諭を経て、現在、北海道教育大学附属函館中学校教諭。研究テーマは、資質・能力の育成を実現するための教科等横断的なカリキュラム構築、中学校社会科における課題解決的な学習のための単元構築等。現任校では、研究主任として、次期学習指導要領の趣旨を具現化するためのカリキュラム構築や評価・改善の在り方を研究中。2017・2018 年度の2年間、「海洋教育パイオニアスクールプログラム」(日本財団・東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター・笹川平和財団海洋政策研究所)採択校として、中学校社会科・地理的分野における海上輸送に関する単元構築に取り組んでいる。所属学会は日本社会科教育学会、日本消費者教育学会、法と教育学会。
古賀 正広(こが まさひろ)
佐賀大学教育学部卒業。福岡県大牟田市内の小学校に勤務し、現在、大牟田市立みなと小学校校長。大牟田市では、2012 年に市内すべての公立小・中・特別支援学校がユネスコスクールに加盟し、学校や地域の特色を生かした持続可能な開発のための教育(ESD)の推進を行っている。2016 年には、大牟田市教育委員会が、東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センターとの海洋教育促進拠点としての連携に関する協定を結び、みなと小学校は、大牟田市の海洋教育推進モデル校としてカリキュラム開発等の実践的研究を進めることとなった。それに伴い、推進モデル校の校長として2017 年に大牟田市海洋教育推進協議会委員となり、市教育委員会、東京大学、市内海洋教育推進モデル校の3校と連携して、海を通したESD としての海洋教育の推進にあたっている。
後藤 祐希(ごとう ゆうき)
山形県長井市出身。東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科卒業。2015 年東京海洋大学海事普及会代表として山形県南陽市の海洋教育事業に参画。その後、同大学乗船実習科航海課程修了。現在、同大学院海洋科学技術研究科博士前期課程海運ロジスティクス専攻に在籍中。三級海技士(航海)。専攻は国際法、海事法。所属学会は日本航海学会。
猪野 忠(いの ただし)
国学院大学文学部史学科卒業。埼玉県および山形県で公立中学校社会科教諭。山形県南陽市教育委員会課長補佐(兼)指導係長、南陽市立赤湯中学校教頭、東置賜郡高畠町立第四中学校校長、南陽市立赤湯中学校校長、南陽市教育委員会教育次長を歴任し、2010年から2018 年3 月まで南陽市教育委員会教育長。教育長として「第五次南陽市教育振興計画」を策定し、地域の教育力を連携・連動・一体化させる「地域総合型教育」による人材育成を推進する。2015 年より同市中等教育課程での海洋教育を主導。2009 年山形県教育功労者表彰、2018 年地方教育行政功労者表彰(文部科学大臣)を受賞。
神田 英宣(かんだ ひでのぶ)
慶應義塾大学理工学部卒業。東京海洋大学大学院博士前期課程修了。民間企業を経て海上自衛隊入隊。艦艇勤務(護衛艦、砕氷艦、輸送艦)、海上自衛隊幹部候補生学校教官、防衛庁防衛政策局BMD 研究室、統合幕僚会議事務局第5 室、海上幕僚監部防衛部、第1術科学校生徒隊長、防衛研究所政策研究部を経て、防衛大学校防衛学教育学群戦略教育室准教授。専門分野は海洋安全保障。主な論文に、「ギニア湾の海賊対策-国際協力と課題」(当誌第65 集、2016 年)、「海洋における軍事活動の無人化-USV・UUV の自律能力の射程」、「海洋の非伝統的安全保障-オーストラリアの脅威認識と対応」、「海底ケーブルの海洋管轄権-サイバー空間における防御機能の追求」、「有人国境離島の排他的経済水域における海洋保護区設定」(2017 年第9 回「海の日」論文優秀賞受賞)がある。所属学会は国際安全保障学会、日本防衛学会、日本島嶼学会。
長谷 知治(はせ ともはる)
東京大学法学部卒業。運輸省(現国土交通省)入省。運輸省運輸政策局貨物流通企画課、近畿運輸局運航部輸送課長、国土交通省海事局総務課専門官、同油濁保障対策官(外航課課長補佐併任)、人事院在外派遣研究員(英国運輸省海事局)、東京大学公共政策大学院特任准教授、国土交通省総合政策局地球環境政策室長、鉄道・運輸機構総務課長等を経て、東京大学公共政策大学院特任教授。船舶職員法、油濁損害賠償保障法の改正や、油濁損害に係る追加基金議定書の策定等に従事。当誌第59 集、2010 年掲載論文「環境に優しい交通の担い手としての内航海運・フェリーに係る規制の在り方について~カボタージュ規制と環境対策を中心に~」は、2011 年山縣勝見賞論文賞を受賞。所属学会は日本公共政策学会、日本海洋政策学会。
高橋 孝治(たかはし こうじ)
日本文化大学法学部卒業。法政大学大学院修了(会計修士・MBA)。都内社労士事務所勤務の傍ら放送大学大学院修了(修士(学術)、研究領域:中国法)。中国政法大学刑事司法学院博士課程修了(法学博士)。立命館大学および九州産業大学客員講師、台湾勤務を経て、現在、立教大学アジア地域研究所特任研究員。研究領域は、比較法(中国法・台湾法)、中国社会を素材にした法社会学。特定社労士有資格者、行政書士有資格者、海事代理士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国年鑑2018』(共著)など。論文に「中国における劇場的法律観という試論」「高等教育における分離区分への疑義――法学と数学を素材にして――」(科学・技術研究 2018 年第2 回優秀論文賞受賞)など。所属学会はアジア政経学会、日中社会学会、東アジア学会など。
(敬称略)
- 18/12/11
2018年12月27日(木)から2019年1月6日(日)まで冬季休業とさせて頂きます。
- 18/08/22
「第46回我ら海の子展」(主催 一般財団法人サークルクラブ協会、公益社団法人日本海洋少年団連盟)の授賞式が2018年8月17日ホテル・ニューオータニ(東京)にて開催され、当財団は後援団体として参加しました。
全国の中学生、小学生、幼児から6,243点の応募がありました。
その内、国土交通大臣賞3作品(中学生の部、小学高学年、低学年以下の部)はじめ、主催者、後援者、個人審査員による特別賞、金賞、銀賞並びに東日本大震災を機に創設された「がんばろう日本賞」の合計61作品に各賞が贈られました。
(※以下の写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。)
「第46回我ら海の子展」授賞式後の集合写真
2018.8.17 於ホテル・ニューオータニ(東京)
山縣記念財団理事長賞には長崎県の中学3年生、長嶋 かのこ(ながしま かのこ)さんの
絵画「波紋」が選ばれ、当財団郷古理事長より長嶋さんに賞状が贈られました。
今後、受賞作品展示発表会が全国を巡回予定です。
展示会の日程は、以下の通りです。
・ 8月 9日(木)~ 9月 4日(火)銀座ギャラリー(東京メトロ銀座駅・日比谷駅間の地下連絡通路)
・ 9月29日(土)~10月28日(日)アクアマリンふくしま(福島県いわき市小名浜字辰巳町50)
・ 11月 5日(月)~11月16日(金)国土交通省 1階ロビー(平日のみ)
・ 12月 8日(土)~ 1月 6日(日)海の科学館(香川県琴平町)
・ 1月16日(水)~ 2月17日(日)氷川丸(横浜市中区山下町山下公園地先)
- 18/08/03
2018年8月13日(月)から15日(水)まで夏季休業とさせて頂きます。
- 18/07/20
当財団が海事交通文化の研究及び普及・発展に貢献された方々を顕彰するために、2008年に創設した「山縣勝見賞」は本年第11回目を迎え、7月20日(金)「2018年山縣勝見賞」の贈呈式を、海運クラブにて開催致しました。
「2018年山縣勝見賞」贈呈式における受賞者記念撮影 2018年7月20日 於海運クラブ
左から谷川夏樹氏(特別賞)、今津隼馬氏(功労賞)、畑本郁彦氏(論文賞)、岸本宗久氏(著作賞)
(写真をクリックすると大きくなります。)
受賞者、受賞者略歴、受賞理由は以下の通りです(敬称略)。
なお、来年2019年の山縣勝見賞(著作賞、論文賞、功労賞、特別賞)は、2019年1月初旬から3月末まで募集致しますので、是非奮ってご応募下さい。募集要領はこちらの中央の項目「2.「山縣勝見賞」の募集」をご覧下さい。
記
≪著作賞≫
岸本宗久(きしもとむねひさ)編著『海上衝突予防法史概説』
(成山堂書店2017年2月発行)
受賞者略歴
1937年生まれ。東京商船大学商船学部航海科卒業、太平洋海運(株)入社(海上勤務)、その後甲種船長免許(現、一級海技士(航海))、海事補佐人登録、1974年明治大学法学部法律学科卒業、1976年 小川田川二宮法律事務所(現、小川総合法律事務所)入所。以降、海事補佐人として各種海難審判補佐並びに海難事故調査に従事する。現在、日本海事補佐人会副会長、日本船長協会理事。著書に『船舶衝突の裁決例と解説』(共著、成山堂書店)、論文に「マラッカ王国海法」(日本船長協会)、「舷灯考」(海洋会会誌『海洋』)など。
受賞理由
長い間、船舶の衝突を予防する方法は船員により、なかば慣習的に実施されてきたが、成文化されたのはわずか150年ほど前のこととされている。本書は、成文化されるはるか前の時代から現在までの衝突予防策から法制度までを、世界各国の法令・条約の変遷に言及しながら、多くの学術書にありがちな難解な用語や表現を可能な限り少なくし、大変読みやすい平易な文章で、初心者でも理解しやすいように書かれている。また、海上衝突予防法の抱える問題を過去・現在・未来にわたって網羅した歴史書的な一面も併せ持つ、啓蒙的な示唆に富む著作となっている。
≪論文賞≫
畑本郁彦(はたもとふみひろ)著「内航船の安全管理体制構築に関する研究」
(神戸大学大学院海事科学研究科/海事科学専攻 博士学位論文2017年9月)
受賞者略歴
1970年生まれ。広島商船高等専門学校機関科卒業、川崎汽船(株)入社(海上勤務)。(株)海洋総合技研取締役、(株)海総研テクノフィールド代表取締役、NPO法人日本船舶管理者協会理事等を歴任し、現在成進海運(株)(機関長)勤務のかたわら、日本船舶管理者協会技術顧問。また、2000年広島大学工学部第一類(機械系)卒業(工学学士)の後、2017年神戸大学大学院海事科学研究科博士課程修了。一級海技士(機関)、海事補佐人。発表論文として、「内航海運の船舶管理における法的側面の課題」(『日本航海学会論文集』第136号)、「内航海運における船舶管理業務に関するガイドラインの改善」(日本海運経済学会『海運経済研究』第51号)など。
受賞理由
日本の内航海運は、船員問題をはじめとする諸問題に対し、国土交通省の主導の下、グループ化による船舶管理会社を設立し、業務の効率化を推進する船舶管理会社活用政策を展開しているが、管理会社の安全品質が明示されていないことなどの理由で、実現されていないのが実情である。そのような現実的な問題意識に基づき、内航船の安全管理体制を構築する内航海運に必要な施策を具体的且つ分かりやすく明らかにしている点で大いに評価できる。また、日本船舶管理者協会・技術顧問として実務上の問題に日々向き合い、学界・業界の最先端の知見を得ながら問題解決に尽力している点で、学術的にも実務的にも非常に価値の高い論文と言える。
≪功労賞≫
今津隼馬(いまづはやま)(東京海洋大学名誉教授)
受賞者略歴
1945年生まれ。東京商船大学商船学部航海科卒業。東京大学工学部、大学院工学研究科非常勤講師、東京商船大学商船学部教授を経て、東京海洋大学海洋工学部教授、理事・副学長を歴任。その間、船舶技術研究所、海上保安庁、交通政策審議会、人事院の研究員・専門委員などを務める。「避航法に関する研究」で工学博士(東京大学)。著書に、『双曲線航法』、『電波航法』(共著)、『避航と衝突予防装置』など。また、「衝突針路を使ったOZT(相手船による妨害ゾーン)を用いた衝突警報の検討」(日本航海学会誌Vol.188、2013年)などの論文がある。2013年、工業標準化(ISO)で経済産業大臣表彰を受賞。現在、東京海洋大学名誉教授。
受賞理由
同氏は長年にわたり東京商船大学他にて教鞭を執られ、以来我が国の航海学界を牽引されてきた。その間、日本航海学会の副会長を歴任し、日本航海学会賞を二度受賞、また、多数の著書や論文を通じ、我が国航海学の第一人者であり続けてきた。また、学会の発展と有為な人材の育成に尽力し、多大な功績を果たした。
≪特別賞≫
谷川夏樹(たにがわなつき)(画家)
受賞者略歴
1976年生まれ。兵庫県在住。13歳から独学で油絵を描き始める。2000年から、EARTHにARTという言葉が含まれることから、屋号をEARTH CONTAINERとして、コンテナを経済のみならず文化的側面から捉える作家活動をはじめる。油彩による平面作品と平行して、実物のコンテナに「コンテナくん」の顔をペインティング。世界を旅する本物のコンテナを通じてアートと社会の関わりについての可能性を探っている。2005年第24回新風舎出版賞特別賞受賞。著書に、作品集『EARTH CONTAINER#1-コンテナくん見た?』、『AloAloha!コンテナくんハワイの旅』、『コンテナくん』、月刊『かがくのとも』通巻588号『かもつせんのいちにち』などがある。
受賞理由
『かもつせんのいちにち』、『コンテナくん』(いずれも福音館書店刊)ほか一連の絵本のモチーフとして船を取り上げ、とりわけ内航船の役割や深刻な船員不足を知り、内航海運の存在を広めようという意識で小学生や未就学児童に船や海運に親しんでもらうための絵本を上梓している。そのような活動を通じ、子供たちのみならず、その親の世代に対しても海事文化の理解に一役買っている点が評価できる。
以上
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