2017年山縣勝見賞贈呈式開催

 当財団が海事交通文化の研究及び普及・発展に貢献された方々を顕彰するために、2008年に創設した「山縣勝見賞」は本年第10回目を迎え、7月20日(木)「2017年山縣勝見賞」の贈呈式を、海運クラブにて開催致しました。

「2017年山縣勝見賞」贈呈式における受賞者記念撮影 2017年7月20日 於海運クラブ
左から國領英雄氏(功労賞)、若土正史氏(論文賞)、西崎ちひろ氏(論文賞)、木原知己氏(著作賞)
(写真をクリックすると大きくなります。)

 受賞者、受賞者略歴、受賞理由は以下の通りです。

≪著作賞≫

木原知己著『船舶金融論-船舶に関する金融・経営・法の体系-』
 (海文堂出版2016年5月刊)

受賞者略歴:
 1984年九州大学法学部法律学科卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。主として船舶融資を担当し、営業第八部長、高松支店長を最後に同行退職。2005年に都内金融機関に入行し、船舶金融チームを立ち上げる。2011年、青山綜合会計事務所顧問に就任。その後、パートナーを経て 現在は同事務所海事スーパーバイザー。船主向け経営コンサルティングの傍ら、ファイナンスアレンジなどに従事する。現在、早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(船舶金融法研究)、センチパートナーズ(株)代表取締役、海事振興連盟三号会員などを務める。

受賞理由:
 船舶の建造あるいは購入にかかる必要資金を供給する「船舶金融」に関連する事項について、金融機関や会計事務所、並びに早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(「船舶金融法」講座担当)等の経験を通して会得した知見をもとに、1)金融論、2)船主経営論、3)法との接点といった論点も踏まえ、金融サイド・船主サイド両面から、網羅的、体系的、客観的、多面的、実用的に解説した本書は、「船舶金融分野におけるバイブル」ともいえる。

 

≪論文賞≫

西崎ちひろ著「見張り作業における操船者の状況認識と見張り支援に関する研究」
(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻 博士学位論文2016年3月工学 課程博士)

受賞者略歴:
 東京海洋大学海洋工学部商船システム工学課程航海学コース卒業(卒業論文「レーダ画像処理による船舶映像の抽出に関する研究」、卒業時に海洋会賞を受賞)。同大学大学院(海洋科学技術研究科海運ロジスティクス専攻)修士課程(修士論文「レーダ画像処理による船舶の捕捉追尾に関する研究」)、独立行政法人海上技術安全研究所(現在の国立研究開発法人海上・港湾・航空研究所)勤務を経て、2016年3月今回受賞の論文により東京海洋大学博士(工学)を取得。又、日本航海学会英文論文誌”Transactions of Navigation Vol.1, No.1”(2016年3月)掲載の論文’Quantifying the Severity of Marine Collision Accidents Caused by Human Factors’により、竹本孝弘氏とともに2015年度日本航海学会論文賞を受賞。2016年東京海洋大学助教就任。
 
受賞理由:
 海難の中で最も多く発生している衝突海難の原因の8割を占める「ヒューマンエラー」について理解し、それらを抑制するために、これらヒューマンエラーの背後にある様々な要因も含めた対策として、操船者の行動分析、SAGAT(Situation Awareness Global Assessment Technique)を用いた状況認識の計測・分析、人間信頼性解析手法CREAM(Cognitive Reliability Error Analysis Method)を用いた操船者エラーの背後要因整理などによって、対策を提案した手法は評価できる。

 

≪論文賞≫
若土正史著「大航海時代におけるポルトガル「インド航路」の海上保険の活用について」
(神戸大学大学院経済学研究科経済学専攻 博士学位論文 2016年3月 経済学 課程博士)

受賞者概要/略歴:
 1973年 関西学院大学商学部卒業後、東京海上火災保険(株)入社。本社各部や支店営業に従事。この間、関西学院大学大学院商学研究科MBA取得。東京海上日動あんしん生命(株)LP営業部長等を経て退職後、神戸大学大学院経済学研究科博士課程前期課程ののち後期課程(専攻:中近世日本経済史)に進み、2013年3月から1年間ポルトガルを中心に海上保険史を調査研究のためポルトガル・コインブラ大学に visiting scholarとして留学。その後も度々渡航して、ポルトガル及びスペインの古文書館に眠る保険史料を解読。2016年3月今回受賞の論文にて、神戸大学博士号(経済学)を取得。2016年12月より同大学海事科学部非常勤講師(海上保険論)。
 

受賞理由:
 本研究は、今日の様々な保険の源流ともいうべき「海上保険」の生成史について論究したもの。具体的な取引事例を大航海時代のポルトガルとしたのは、わが国の戦国時代から江戸時代にかけ、ヨーロッパ人との交易取引の中で、海上保険の原型である「海上貸借」(通称「投銀」(なげがね))という制度が活用されており、当時のポルトガルの海上保険制度との関連に興味が沸いたため。ポルトガル・インド航路の関連史料は、リスボン大震災(1755年)の影響でほとんど消失しているため、ポルトガルの隣国スペインのブルゴス市の古文書館で発見された15件の海上保険契約取引史料から当時の取引実態を解明したが、これまで同史料を使った同テーマに関する先行研究は見当たらず、画期的な研究と言える。これにより、インド航路と日本航路における海上保険分野での連続性について証明されたのを契機に、日本の海上保険史研究の新たな重要研究課題となることを期待する。

 

≪功労賞≫
國領英雄氏

受賞者略歴:
 1933年生まれ。京都大学経済学部卒業。同大学文学部史学科卒業後、(社)日本海運集会所に入所し、仲裁業務に従事。1975年同所を退職して、神戸商船大学商船学部助教授に就任。その後同大学教授を経て、大阪学院大学流通科学部教授に就任。この間、日本海運経済学会副会長、日本港湾経済学会常任理事などわが国学会の要職に就く。又、(財)関西交通経済研究センターの調査研究委員会および近畿運輸局設置の検討会等の委員長や座長を務め、1990年には第50回海の記念日・近畿運輸局長表彰を受ける。現在、神戸商船大学名誉教授、大阪学院大学名誉教授。

受賞理由:
 京都大学経済学部で佐波宣平教授の指導を受け、更に同大学文学部において西洋中世史を専攻。若き日の(社)日本海運集会所での仲裁業務の経験を出発点として、氏の研究領域は海運から物流、港湾、航空等多岐に亘っている。海運だけをとりあげても、企業財務、金融、景気変動、密度の経済学、ネットワーク、法の経済学、市場、労働、バルク、クルーズ、フェリー、外国海運政策、内航海運等、広い範囲にわたる研究成果が残されている。
 常に新鮮な目で海運の今日的課題に向き合って研究を重ね、学会の発展と有為な人材の育成に尽力してきた氏の長年の努力と情熱に敬意を表するものである。

 

≪特別賞≫
 該当者なし

 

                                                       以上

当財団理事長に郷古達也、理事に久下浩一就任

当財団理事長 小林一夫(こばやし かずお)は6月15日付を以って退任して顧問に就任し、同日付にて郷古達也(ごうこ たつや)が後任の理事長に就任致しました。
又、7月1日付にて、久下浩一(くげ こういち)が新たに理事に就任致しました。
これに伴い、財団案内-役員・評議員・研究員のページを更新しました。

2017年山縣勝見賞受賞者決定

 当財団は、2008年に設立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海運を中心とする海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果(著作・論文)や業績を対象として表彰する制度を発足しましたが、このほど「2017年山縣勝見賞」の受賞者が下記の通り決定しましたので、お知らせ致します(敬称略)。
 なお受賞者への贈呈式は7月20日(木)海運クラブにて行います。

≪著作賞≫

木原知己著『船舶金融論-船舶に関する金融・経営・法の体系-』
 (海文堂出版2016年5月発行)

受賞者略歴:
 1984年九州大学法学部法律学科卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。主として船舶融資を担当し、営業第八部長、高松支店長を最後に同行退職。2005年に都内金融機関に入行し、船舶金融チームを立ち上げる。2011年、青山綜合会計事務所顧問に就任。その後、パートナーを経て 現在は同事務所海事スーパーバイザー。船主向け経営コンサルティングの傍ら、ファイナンスアレンジなどに従事する。現在、早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(船舶金融法研究)、センチパートナーズ(株)代表取締役、海事振興連盟三号会員などを務める。

受賞理由:
 船舶の建造あるいは購入にかかる必要資金を供給する「船舶金融」に関連する事項について、金融機関や会計事務所、並びに早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(「船舶金融法」講座担当)等の経験を通して会得した知見をもとに、1)金融論、2)船主経営論、3)法との接点といった論点も踏まえ、金融サイド・船主サイド両面から、網羅的、体系的、客観的、多面的、実用的に解説した本書は、「船舶金融分野におけるバイブル」ともいえる。

 

≪論文賞≫

西崎ちひろ著「見張り作業における操船者の状況認識と見張り支援に関する研究」
 (東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻 博士学位論文2016年3月工学 課程博士)

受賞者略歴:
 東京海洋大学海洋工学部商船システム工学課程航海学コース卒業(卒業論文「レーダ画像処理による船舶映像の抽出に関する研究」、卒業時に海洋会賞を受賞)。同大学大学院(海洋科学技術研究科海運ロジスティクス専攻)修士課程(修士論文「レーダ画像処理による船舶の捕捉追尾に関する研究」)、独立行政法人海上技術安全研究所(現在の国立研究開発法人海上・港湾・航空研究所)勤務を経て、2016年3月今回受賞の論文により東京海洋大学博士(工学)を取得。又、日本航海学会英文論文誌”Transactions of Navigation Vol.1, No.1”(2016年3月)掲載の論文’Quantifying the Severity of Marine Collision Accidents Caused by Human Factors’により、竹本孝弘氏とともに2015年度日本航海学会論文賞を受賞。2016年東京海洋大学助教就任。
 
受賞理由:
 海難の中で最も多く発生している衝突海難の原因の8割を占める「ヒューマンエラー」について理解し、それらを抑制するために、これらヒューマンエラーの背後にある様々な要因も含めた対策として、操船者の行動分析、SAGAT(Situation Awareness Global Assessment Technique)を用いた状況認識の計測・分析、人間信頼性解析手法CREAM(Cognitive Reliability Error Analysis Method)を用いた操船者エラーの背後要因整理などによって、対策を提案した手法は評価できる。

 

≪論文賞≫

若土正史著「大航海時代におけるポルトガル「インド航路」の海上保険の活用について」
 (神戸大学大学院経済学研究科経済学専攻 博士学位論文 2016年3月 経済学 課程博士)

受賞者略歴:
 1973年 関西学院大学商学部卒業後、東京海上火災保険(株)入社。本社各部や支店営業に従事。この間、関西学院大学大学院商学研究科MBA取得。東京海上日動あんしん生命(株)LP営業部長等を経て退職後、神戸大学大学院経済学研究科博士課程前期課程ののち後期課程(専攻:中近世日本経済史)に進み、2013年3月から1年間ポルトガルを中心に海上保険史を調査研究のためポルトガル・コインブラ大学に visiting scholarとして留学。その後も度々渡航して、ポルトガル及びスペインの古文書館に眠る保険史料を解読。2016年3月今回受賞の論文にて、神戸大学博士号(経済学)を取得。2016年12月より同大学海事科学部非常勤講師(海上保険論)。

受賞理由:
 本研究は、今日の様々な保険の源流ともいうべき「海上保険」の生成史について論究したもの。具体的な取引事例を大航海時代のポルトガルとしたのは、わが国の戦国時代から江戸時代にかけ、ヨーロッパ人との交易取引の中で、海上保険の原型である「海上貸借」(通称「投銀」(なげがね))という制度が活用されており、当時のポルトガルの海上保険制度との関連に興味が沸いたため。ポルトガル・インド航路の関連史料は、リスボン大震災(1755年)の影響でほとんど消失しているため、ポルトガルの隣国スペインのブルゴス市の古文書館で発見された15件の海上保険契約取引史料から当時の取引実態を解明したが、これまで同史料を使った同テーマに関する先行研究は見当たらず、画期的な研究と言える。これにより、インド航路と日本航路における海上保険分野での連続性について証明されたのを契機に、日本の海上保険史研究の新たな重要研究課題となることを期待する。

 

≪功労賞≫

國領英雄(神戸商船大学名誉教授、大阪学院大学名誉教授)

受賞者略歴:
 1933年生まれ。京都大学経済学部卒業。同大学文学部史学科卒業後、(社)日本海運集会所に入所し、仲裁業務に従事。1975年同所を退職して、神戸商船大学商船学部助教授に就任。その後同大学教授を経て、大阪学院大学流通科学部教授に就任。この間、日本海運経済学会副会長、日本港湾経済学会常任理事などわが国学会の要職に就く。又、(財)関西交通経済研究センターの調査研究委員会および近畿運輸局設置の検討会等の委員長や座長を務め、1990年には第50回海の記念日・近畿運輸局長表彰を受ける。現在、神戸商船大学名誉教授、大阪学院大学名誉教授。
 

受賞理由:
 京都大学経済学部で佐波宣平教授の指導を受け、更に同大学文学部において西洋中世史を専攻。若き日の(社)日本海運集会所での仲裁業務の経験を出発点として、氏の研究領域は海運から物流、港湾、航空等多岐に亘っている。海運だけをとりあげても、企業財務、金融、景気変動、密度の経済学、ネットワーク、法の経済学、市場、労働、バルク、クルーズ、フェリー、外国海運政策、内航海運等、広い範囲にわたる研究成果が残されている。
 常に新鮮な目で海運の今日的課題に向き合って研究を重ね、学会の発展と有為な人材の育成に尽力してきた氏の長年の努力と情熱に敬意を表するものである。

 

≪特別賞≫
該当なし

                                                       以上

高田富夫著『ロジスティクス管理の方法』発行

 3月30日、当財団理事 高田富夫氏(流通経済大学流通情報学部教授)執筆による『ロジスティクス管理の方法』を発行し、海事関係団体・企業・図書館・研究者などに配本しました。関心をお持ちの方、お読みになりたい方は、下記までe-mail又はお電話にてお問合せ下さい。

 一般財団法人 山縣記念財団
 TEL: 03-3552-6310
E-mail: zaidan@yamagata.email.ne.jp


本書目次

    はしがき

    第1章 ロジスティクスの源流と発展
     はじめに
     Ⅰ ロジスティクスの源流域
     Ⅱ 戦争とロジスティクス
     Ⅲ ビジネス・ロジスティクスの成立と発展
     Ⅳ ソーシャル・ロジスティクスの成立と発展
     本章のまとめ

    第2章 ロジスティクスとSCM
     はじめに
     Ⅰ ジャスト・イン・タイムと部材必要量計画
     Ⅱ 経営管理概念とITツール:発展の系譜
     Ⅲ SCMとプロセス参照モデル
     Ⅳ SCMのイネーブラ
     Ⅴ SCMの課題
     本章のまとめ

    第3章 物品の属性とロジスティクス系
     はじめに
     Ⅰ 物品のロジスティクス特性
     Ⅱ ABC分類とパレートの法則
     Ⅲ ロジスティクス費用の構造
     Ⅳ 物品の属性とロジスティクス費用
     本章のまとめ

    第4章 顧客満足とロジスティクス・サービス
     はじめに
     Ⅰ ロジスティクス・サービスの効果
     Ⅱ 顧客満足とロジスティクス
     Ⅲ サービス水準の最適化
     Ⅳ ロジスティクス系崩壊への対応
     本章のまとめ

    第5章 在庫管理の理論
     はじめに
     Ⅰ ロジスティクスにおける在庫の形態と機能
     Ⅱ 顧客満足と在庫補充
     Ⅲ 確実性条件下の在庫管理モデル
     Ⅳ 不確実性条件下の在庫管理
     Ⅴ 在庫一括管理
     本章のまとめ

    第6章 輸送管理の方法
     はじめに
     Ⅰ 輸送手段の最適化
     Ⅱ 輸送経路の最適化:基本型
     Ⅲ 輸送管理の最適化:発展型
     本章のまとめ

    第7章 立地決定の方法
     はじめに
     Ⅰ 一般的な立地決定要因
     Ⅱ 立地理論の史的系譜
     Ⅲ 単独施設の立地モデル
     Ⅳ 複数施設の立地モデル
     本章のまとめ

    第8章 需要予測の方法と課題
     はじめに
     Ⅰ 各種の予測手法
     Ⅱ 指数平滑法
     Ⅲ 時系列分析法
     Ⅳ 産業連関モデルによる予測
     Ⅴ 需要予測の課題と対応
     本章のまとめ

    あとがき


「はしがき」より

 著者がロジスティクスに関心をもち、大学で講義を始めるようになったのは90 年代後半のことである。それまでは海運を中心とする国際貨物輸送の研究に経済学の視点から取り組んできた。実は日本海運に成長の限界が見え始め、その限界を打破するための方策を考える必要に迫られたことが、ロジスティクス研究に傾斜していくきっかけであった。
 先の大戦で保有船腹のほとんどすべてを失った日本海運は、日本経済を支える基幹産業として国からの手厚い助成のもとで発展を続け、高度経済成長末期には世界最大の船腹を保有するまでに規模を拡大した。重厚長大産業の発展に引っ張られる形での規模の拡大であった。
 日本経済が絶頂期を迎えた80 年代後半、すでに日本海運は勢いを失い始めていた。その主因は為替相場と賃金上昇、技術優位の喪失にあった。輸送技術に関しては、配乗船員数を極端なまでに削減したパイオニア船や超高速貨物船のテクノスーパーライナーの研究が一部で進んだものの、新技術の実用化が難しく、結果として新しい技術が生まれないまま旧来の技術が使われ続けた。その一方で先進国からの技術導入が進んだ後発国は競争力を強めていった。そして90 年代日本経済のバブルは崩壊した。そこに新たな成長エンジンとして期待が高まったのがIT と一体となったロジスティクスであった。ロジスティクスは船舶に係る輸送技術ではなく、新しいビジネスモデルとしての経営管理法に係る経営ソフトとしての技術である。海運企業が情報技術を駆使して注目を集め始めていたこの分野に進出することによって、再び成長軌道に乗ることができるものと期待したのである。
 しかしロジスティクスに取り組むその後の道程はけっして平坦でなかった。視点と方法が交通経済学とは大きく異なっていたのである。もっとも大きな違いは主体が違う点である。それまでの運送事業者から荷主の視点への転換が必要であった。そして運送事業者が関わるのはロジスティクスそのものではなく、一般企業の負託を受けて行うロジスティクスすなわち3PL事業である。それには経済学のみならず経営学、マーケティング論、会計学、数理計画法、そしてコンピュータ・サイエンスなどの諸分野の知見を総動員した真に学際的な視点が必要であった。
 わが国でも物流やロジスティクスに関する著作はこれまでにも数多く公刊されてきた。多くは実務書である。これらは大学の研究者がロジスティクスの実際を知る上でおおいに参考になる。ただ上に述べたロジスティクスの全体像や他領域との関連性を明確化したものは少ない。それと同時に研究者が好む学術的、理論的文献も散見される程度で、それほど多くない。いわんやロジスティクス情報処理に関連した文献でそれを専門としない人々にも有用性の高い文献となるとその数は少ない。
 かつては特別な訓練を受けた専門家だけに利用が許されたコンピュータがパソコンとして個人や家庭で利用できるようになって社会の隅々にまで普及したように、現代のロジスティクス思想を世に広く伝えるためには、専門としない人々にも理解しやすい形でロジスティクスを提示する必要がある。ただ忘れてならないのは、斯学の学問体系そのものをきちんと整理しておくことである。本書の意図はこうした点にもある。

 本書は学部および大学院で行ってきたロジスティクス論の講義内容をベースに、講義では触れなかったロジスティクス管理のより進んだ内容を追加して、ロジスティクス論を体系化して著わしたものである。
 さてロジスティクスには三つの顔がある。一つには軍事面での後方支援活動、二つには企業の経営管理活動、そして三つには環境保全や自然ないし人為的なディザスターに備える社会的活動である。言い換えればロジスティクスはミリタリー系、ビジネス系、ソーシャル系の三分野に分類することができる。各分野は根底において輸送、保管、在庫(備蓄)といった共通の課題をもっているが、それぞれに固有の課題も少なくない。本書は書名にある通り、製造業や流通業のロジスティクスを取り上げて企業の経営管理活動としてのビジネス・ロジスティクスについて論ずるものであり、とりわけ管理の方法について多くの紙幅を割いている。
 ロジスティクス管理の機能はバルー(Ballou, R.M.)がロジスティクス・トライアングルの各辺に立地戦略、輸送管理、在庫管理を割り当て、トライアングルの中心に受発注管理を配置して管理の全体像を示している。本書でも基本的にバルーの所説に従って管理の内容を区分し、各章で順次取り上げている。

 ここで本書の概要に触れておこう。本書は八つの章から構成されている。第1章から第3章までがロジスティクス論の導入部分であり、第4章から第8章までがロジスティクス管理に関わる部分である。導入部分ではロジスティクスに関連した諸概念を整理することに主眼を置いている。概念規定のあいまいさから、議論が混乱してしまう状況が今もなお見受けられるからである。以下、章を追ってその概要を紹介する。
 まず第1章「ロジスティクスの源流と発展」である。この章の主眼はロジスティクスの源流を探り、現在にいたる進化の過程をたどることにある。語源からロジスティクスの起源をミリタリー系にあるとして、軍事戦略におけるロジスティクスの位置をはじめて明確化した軍事理論家アントワーヌ・ジョミニに言及する。また、車も飛行機も鉄道もない古代オリエントの時代から現代にいたるまでの戦いの歴史を通して、ロジスティクスの軍事的意味について考察する。
 つぎにビジネス・ロジスティクスを取り上げる。ここでは企業内諸部門の統合という観点からサプライチェーン・マネジメントにいたるまでの系譜をたどる。この分野での学術的研究は20 世紀初頭までさかのぼる。当初は流通やマーケティングの中で物品の輸送や保管が論じられ、第2次世界大戦後にスミケイ&バワーソックスによる本格的な物流書やドラッカーの論文「経済の暗黒大陸」などを経て今世紀にいたる発展の経過を振り返る。
 この章の最後でロジスティクスの三大分野の中でもっとも新しいソーシャル系を取り上げる。高度経済成長下の経済至上主義に異を唱える論拠として社会的費用への関心が高まったのがソーシャル系ロジスティクスのはじまりである。当初はロジスティクスないし物流と直接関連させたものではなく旅客輸送に重点が置かれていたが、現在では循環型社会の実現や突発事態への対応など、サステナビリティーとヒューマニタリアンのためのロジスティクスに重点が移っている。
 第2章「ロジスティクスとSCM」では、ロジスティクスとひじょうに近い概念であるジャスト・イン・タイムや部材必要量計画、サプライチェーン・マネジメント(SCM)などの経営管理概念と、IT ツール発展を時間的な流れに沿って体系化して述べる。さらにサプライチェーンの機能や業務プロセスを把握・分析して適切なSCM を導入するためのSCM 業務参照モデルの概要について述べる。SCM はコンピュータのソフトウェア・システムを指すこともあることから、そのシステム構造に解説を加える。SCM システムの一翼を担うロジスティクス情報システムにも言及する。このソフトウェア・システムの各モジュールはロジスティクス管理の内容を示すものに他ならない。
 顧客との力関係や企業間関係など、SCM 導入の成否に影響する重要な要因=イネーブラと導入を阻害する要因についても触れる。とくに阻害要因として情報共有への不安、企業文化の違い、そして規制緩和政策とグローバリゼーションを挙げて論ずる。
 第3章「物品の属性とロジスティクス系」では物品のさまざまな属性がロジスティクス系に与える影響について考える。まず多様な物品を分類して、物品の種別によるロジスティクス系の特徴を明らかにする。つぎにマーケティングの分野でもよく使用されるプロダクト・ライフサイクルの概念を取り上げ、ライフサイクルの各局面にふさわしいロジスティクス系について考察する。マーケティング論でもよく目にするパレートの法則も取り上げ、ABC 商品分類から見た適切なロジスティクス系について述べる。さらにはパレート曲線を近似する特別な関数ならびにシグモイド関数のパラメータ推定にも言及する。
 Ⅲ節では基本的なロジスティクス費用概念を整理して示し、物品の属性とロジスティクス費用の関係を明確にする。ビジネス・ロジスティクスは利益追求を第一の目的とするから、費用の大きさはきわめて重要な関心事である。これまでロジスティクス費用全体の大きさに注目が集まり、費用を細かな費目に細分化して行う詳細な分析は手薄であった。こうした状況に鑑みて費用の細分化と費用削減の可能性を探るとともに、物品の諸属性とロジスティクス費用との関係を明確にする。
 第4章以下はロジスティクス管理に関連する部分である。まず第4章「顧客満足とロジスティクス・サービス」ではマーケティングから生まれた概念である顧客サービスと顧客満足を取り上げる。まず冒頭で物品の経済的効用=価値創造の源泉を考察し、ロジスティクスとマーケティングのきわめて密接な関係を指摘する。そしてロジスティクス・サービス水準と売上げの関係からロジスティクス・サービス水準には最適水準があることを述べる。
 つぎのⅡ節では物品・情報の流れとオーダー・フルフィルメント作業の流れを詳述し、輸送・保管などを包含した複合サービスとしてのロジスティクス・サービスの何たるかを示して、重視すべき顧客満足要因を解明する。Ⅲ節ではリードタイムを分解し、注文サイクルを構成する一連の作業工程を示す。注文サイクルの工程には注文の伝達、物流センターにおける注文処理(注文エントリーと出荷準備)、配送などがあり、各工程の所要時間が注文サイクルと注文頻度に影響することを示す。
 物流の定石ともいえる多頻度物流はこの注文サイクルの長さを短く設定するものである。少量多頻度物流は一般に在庫費用を削減するが、道路混雑や地球温暖化などの環境対策からこれを見直す気運も出ている。物流頻度はコストとトレードオフの関係にあるから、多頻度化を際限なく推し進めればよいというものでもない。最適な物流頻度がある。この章ではそのような最適頻度を見つけるための限界分析と損失関数最小化法にも言及する。
 第5章「在庫管理の理論」では、複数の商品需要変動パターンのなかからそのとき限りで発生する単発型と変動しながらも長期にわたって発生し続ける永続型を対象として考察する。はじめに需要変動とリードタイムを既知とする確実性条件下の在庫管理モデルについて述べる。単発型需要を持つ商品にたいしては限界分析によって最適残品率を理論化し、長期永続型需要を持つ商品に対してはハリスモデルによる最適発注量と発注サイクル、発注点を定式化する。
 つぎに自律型在庫管理の発展型である不確実性モデルを取り上げる。不確実性モデルには定量発注法(発注点法)と定期発注法がある。定量発注法については需要が不確実な場合や、欠品費を既知として応需率を特定する必要のない場合、端境期の需要量および端境期間の長さを未知とした場合という三つのケースにおける確率論的在庫管理法について述べる。不確実な需要においては、需要変動とリードタイムを未知としたうえで、所定の応需率を達成するのに必要な最小在庫量を求める。定期発注法では定量発注法との相違点や特徴を比較するとともに、単一商品発注と複数商品一括発注における発注量決定方法について述べる。発注サイクルや在庫費などの算定モデルにも言及する。
 第6章「輸送管理の方法」では、はじめに輸送時間と在庫費だけに限定したロジスティクス費用を最小化する輸送手段選択の考え方を示す。この考え方は輸送手段によって在庫量や在庫維持費が異なってくることに着目するものである。ベンダー間の市場競争が納品時の輸送手段選択に与える影響についても述べる。つぎに輸送経路最適化について基本型と発展型に分けて述べる。基本型では2 地点間の最適輸送経路(ダイクストラ法)、巡回集配(ミルクラン)における最適輸送経路、そして複数の発地と着地がある環境の下で輸送量を各ルートに最適配分する輸送貨物のOD 間最適配分という三つの問題を取り上げる。
 輸送管理の発展型では、はじめに巡回スポットのクラスター化と巡回順序決定に関する経験則について述べる。ヒューリスティックな経路最適化法として巡回スポット数がある程度多くなっても手動計算可能な掃出法と、現実の多くの制約条件に対応できるセービング法を取り上げ、具体的な計算事例を示して解説する。輸送管理において重要な業務である保有フリート規模(車両や船舶の数)の最適化と保有フリートのルート割当のためのハンガリアン法に言及する。最後にトランシップメント(積み替え)やハブ&スポーク輸送システムで重要な輸送貨物のコンソリデーションを取り上げる。
 第7章「立地決定の方法」では、はじめに倉庫や工場の立地に影響する一般的な要因として自然条件、人口動態、輸送環境、産業クラスターの四つを取り上げて、総論的に立地問題を考える。つぎにチューネン、ウェーバー、フーバーに見られる黎明期立地理論を概観する。理論的な考察に入って、まず多様な立地問題を施設と解法の面から分類する。
 立地決定モデルは単独施設と複数施設のケースに分けて考察することができる。単独施設立地決定は直線型モデル、ユークリッド型モデル、グリッドモデル、加重因子モデルを取り上げ、それぞれの理論的背景を明らかにする。ユークリッド型モデルは微積分法によって最小距離立地点を求めるものであり、グリッドモデルは工場とそこで製造された商品の販売店を固定し、消費量や販売量が既知であることを前提として物流センターの最適立地点を求めるものである。加重因子モデルは立地に係る定性的要因と定量的要因に配慮して、因子分析の結果得られるスコアから数量的に立地点を求める方法である。実態に近い複数施設の立地点を求める方法には大きく分けて厳密解法とシミュレーションモデル、ヒューリスティック法の三つの方法がある。ここでは多元厳密解法とヒューリスティック法としての誘導線形計画法を取り上げて、その基本的な考え方について述べる。
 第8章「需要予測の方法と課題」はロジスティクス管理において予測がひじょうに重要になっていることから設けられたものである。需要の予測如何が在庫の多寡に大きく影響するからである。予測はロジスティクスの分野だけでなく、マーケティングその他の企業内部門に共通した重要事項である。ロジスティクス管理の範囲を越えたテーマといってよい。しかし現代経営におけるサプライチェーン・マネジメントのもっとも大きな目標は在庫の適切な管理による在庫費用の削減にある。在庫の適切な管理の根源は適切な予測にある。
 この章ではまず数多くの予測手法について大まかな概要や適用期間の長さを示して整理する。つぎにこれらの中から比較的手軽に利用できる指数平滑法、時系列分析法(古典的成分分離法とボックス・ジェンキンス法)、産業連関表に基づく予測手法について、実務上の利用を念頭において概観し、予測手法の適切な適用について述べる。とくに指数平滑法はロジスティクス実務の面においてもよく利用されていることから、多くの紙幅を割いて述べる。最後に需要予測に係るロジスティクス固有の課題を取り上げる。

 本書の発行に当たっては一般財団法人山縣記念財団から企画の段階から全面的なご支援をいただくことができた。小林一夫理事長をはじめとして郷古達也常務理事、堀井宣幸理事には荒削りの原稿に幾度となく目を通していただき、細部にいたるまで数多くの有益なご指摘を頂戴することができた。とりわけ郷古常務理事には出版に係る雑多なお世話をいただいた。各氏のご指摘によって本書のクォリティーは格段に改善された。こうした方々のご助力がなければ本書のような基礎的研究書が世に出ることはけっしてなかったであろう。本書に不備や誤りがあるとすれば、それはすべて著者の責に帰すべきことは言うまでもない。
 著者が山縣記念財団と初めて関わりを持たせていただいたのはもう40年以上も前のことになる。当時は山縣記念財団に「海事交通文化研究所」という名称を付して呼ばれていたように記憶する。海運、交通、保険の研究者の育成に力を注いでいた研究所であった。大学院博士課程(今日の博士後期課程)に入ったばかりの私はそこから研究生活をはじめることとなった。爾来さまざまなご支援を賜り、そしてこのたびは本書執筆の機会を与えていただき今日に至っている。山縣記念財団および常勤理事各氏には心よりお礼申し上げる次第である。


著者 高田富夫氏の略歴

1971年 早稲田大学第一商学部卒業

1973年 早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了

1976年 早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学

1976年 山縣記念財団専任研究員

1978年 名古屋学院大学経済学部専任講師

1997年 早稲田大学博士(商学)

2000年 流通経済大学流通情報学部教授

主な著書
『交通経済学』(翻訳書)晃洋書房、1984年
『商学総論』(共著)晃洋書房、1991年
『海運産業の成長分析』(共著)晃洋書房、1996年

以上

2016年度日本海洋少年団連盟「褒状山縣賞」表彰式に出席しました

2017年3月10日(金)、川崎汽船(株)本社(東京・千代田区)にて、(公社)日本海洋少年団連盟主催の2016年度「褒状山縣賞」表彰式が開催され、当財団から小林理事長が出席しました。

同賞は、同連盟が優秀な団員又は卒団後も引続き海洋少年団員の指導等に当たっている指導者を顕彰するために、同連盟の第3代会長を務めた山縣勝見(当財団創設者、初代理事長)の名を冠し、当財団からの助成を受けて、2010年度から開設したもので、今回は14名の皆さんが受賞されました。

表彰式への出席は内5名で、席上、同連盟の前川弘幸会長(川崎汽船(株)顧問)から挨拶と受賞者への表彰状・バッチの授与があり、続いて当財団小林理事長からも祝辞を送り、記念品として、図書『たいせつなことは船が教えてくれる』(藤沢優月氏著、2012年11月金の星社刊、後記「注」をご参照下さい)を受賞者の皆さんに贈呈しました。

同連盟は、これにより団員の海運、船舶、海洋環境保全等の知識の更なる向上とモチベーションの昂揚を図り、引続き海洋少年団の指導育成に当たる人材を確保し、これらの活動を通じて、全国の少年少女達への海事思想の普及に大きく寄与するとともに、海洋少年団運動の更なる向上を図ることを目指しています。

 

2016年度日本海洋少年団連盟「褒状山縣賞」表彰式

川崎汽船(株)本社にて 日本海洋少年団連盟 前川弘幸会長(前列右)、当財団 小林一夫理事長(同左)を囲んで受賞者記念撮影(クリックすると大きくなります)


 

注:藤沢優月氏著『たいせつなことは船が教えてくれる』:著者(文筆家)が日本郵船のコンテナ船『NYKオルフェウス』に実際に乗船した体験をもとに、若者に対して、働くことの意義、出会い、絆など人が生きる上で大切なことは何か、についてメッセージを送っている青少年向け図書です。

本件参考URL: 日本海洋少年団連盟フェイスブック2017年3月13日投稿記事

『海事交通研究』第66集寄稿論文、「2017年山縣勝見賞」、支援・助成申込みの募集のお知らせ

当財団は、新年1月5日(火)より、以下三事業の募集を致しますので、夫々の募集要領(又は、早見表)をご覧の上、末尾の連絡先宛、是非ご応募・お問合せをお願いします。

1.海事交通研究第66集寄稿論文募集
 当財団は、『海事交通研究』(年報)を1965年(昭和40年)11月に創刊し、海運とその周辺分野に関する最新の研究成果を発表して参りました。

2.2017年山縣勝見賞の募集
 当財団は、2008年に創立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海事交通文化の調査・研究及び普及・発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果を表彰しております。

3.2017年度補助金助成申込の募集
 当財団は、海事交通文化の調査研究、その他海事の発展に貢献し、または貢献しようとする事業への補助金助成活動を行って参りました。

 

※※※※ 1-1.『海事交通研究』第66集への掲載論文の募集要領 ※※※※

 

1. 募集対象論文 :海運、物流、港湾、造船、海上保険及びその周辺分野をテーマとする論文で以下のいずれかでお願いします。

(1)「指定テーマ」:
①日本にとって「海運」とは何か?
 (海運界からだけでなく、荷主や金融機関や他産業の皆様からもご応募下さい。)
②神戸港・大阪港 開港150年
③海運業界の環境対応
 (a. 船舶のCO2 NOx SOx規制問題、b.バラスト水問題、c.省エネ船など)
 
(2)「自由テーマ」:執筆者の希望するテーマ

2. 応募資格者:どなたでも応募出来ます。

3. 応募原稿 :未発表のもので、原則日本語としますが、相談に応じます。共著も可。

4. 容量:A4版縦置き横書き(40字×40行)で10ページ(含・目次・図表・注等)を目安
としますが、最大12ページまでを厳守して下さい。

5. 応募手順:

(1) 以下につき、ご了承の上、ご投稿をお願いします。
①二重投稿・剽窃・自己剽窃とみなされる論文の投稿は不可。
②著書や新聞等の文献から引用した場合及び発想を転用した場合は、出典(著者名・タイトル・発行所名・発行年月等)を明記する。但し、ホームページ上の資料を利用した場合は、URLとアクセスした日付を明記する。

(2) 論文執筆の申請をされる方は、年報掲載論文等執筆申請書(以下申請書という)を
2017年1月5日(木)~3月31日(金)の間に、メール・郵便又はFAXによりお送り下さい。

(3) 当財団の「年報掲載作品編集委員会」が提出された申請書を審査し、年報掲載論文の執筆を応諾するかどうかを4月末までにご連絡致します。

(4) 原稿は2017年8月31日(木)までに、メールに添付して送るか、USBメモリ等記録媒体によりお送り下さい。

6. 提出論文の年報への掲載に際しては、査読(注)を経て、編集委員会での審議にて決定し、10月下旬頃までにお知らせします。発行は、11月下旬~12月上旬の予定です。
(注)査読は、大学または大学に準ずる教育研究機関において教育研究の経験のある者、および民間企業等で実務経験のある者の中で、査読対象の論文の研究分野に精通している者によって行い、①新規性・独創性、②有用性、③信頼性・公平性・客観性、④首尾一貫性、課題達成度、具体的提案、⑤読みやすさを評価項目とします。

7. 原稿料:年報に掲載された論文については、当財団所定の料率にて原稿料をお支払いします。                             
以上

 

※※※※ 1-2.『海事交通研究』第66集への掲載文の募集要領 ※※※※

 

1. 募集テーマ:神戸港・大阪港 開港150年
前ページの論文募集でも、今号の「指定テーマ」と致しましたが、論文以外でも、両港に対する思いなどについて書かれたエッセイ風のものも歓迎します。その他の募集要領は、原則として1-1『海事交通研究』第66集への掲載論文の募集要領に準じる。但し、「掲載文募集」(論文以外)では、「査読」は行いません。
以 上

 

過去の年報掲載論文についてはこちらから


 

※※※※ 2.「2017年山縣勝見賞」の募集要領 ※※※※

 

1. 募集対象分野:海運、物流、港湾、造船、海上保険及びその周辺分野をテーマとする著作
(共著も可)、論文並びに業績

2. 募集開始日 :2017年 1月 5日(木)

3. 応募締切日 :2017年 3月31日(金)(当日の消印有効)

4. 賞の種類及び対象 :
  ① 著作賞(30万円) 海事関係の単著又は共著で、2014年1月1日から2016年12月31日までの
            間に発表されたもの。
  ② 論文賞(20万円) 海事関係論文で、上記と同期間に発表されたもの。
  ③ 功労賞(20万円) 海事交通文化の発展に顕著な業績のあった個人。特にその業績の対象
            期間は問わない。
  ④ 特別賞(20万円) 上記三賞に匹敵する功績が認められる個人又は法人並びにその事業

  尚、既に他の学会又は団体などから受賞している場合でも受賞の資格を有するものとします。
 
5. 応募手続 :
  個人・団体の推薦又は自薦によるものとします。応募者は、山縣勝見賞推薦/申請書に当該書籍/論文を1部添付の上、提出して下さい。 (書籍は後日返却します。)
  尚、推薦/申請書のExcelフォームが必要な方、その他詳細についてはお問い合わせ下さい。

6. 受賞者の発表 : 受賞者の氏名等は、2017年6月上旬までに当財団のホームページ、
        その他海事関連のメディアを通じて発表します。尚、受賞者への贈呈式は2017年7月17日の「海の日」の前後に行います。

以上


 

※※※※ 3.2017年度補助金助成申込の募集要領 ※※※※※

 

1. 募集対象分野:海運、物流、港湾、造船、海上保険及びその周辺分野の調査研究、その他海事
         の発展に貢献し、または貢献しようとする事業への補助金助成

2. 募集開始日 :2017年 1月 5日(木)

3. 応募締切日 :2017年 2月28日(火)(当日の消印有効)

4. 補助金額  :
  申請金額の上下限はない(過去の助成最高額は50万円)。 当財団の助成審査委員会及び理事会の審議を経て、補助金額を決定する。

5. 応募条件  :
(1) 2017年4月から2018年3月までに実施する事業であること
(2) 収益を目的とする事業は対象とせず、海事交通文化の振興又は調査研究に関連する事業であること
(3) 既に実施している事業で、その実績が一定の評価を得ているもの、又はこれから実施しようとする事業の場合は、当該事業を実施するための実態的な人材・知見が整い、事業目的が明確に示されていること
(4) 本助成金を利用して活動した後、本助成金の使途に関する事後報告を速やかに行うこと
     
6. 応募手続:
  応募者は、補助金助成申請書(又はこれに代え、募金趣意書など)を送付して下さい。
  尚、申請書のWordフォームが必要な方、その他詳細についてはお問い合わせ下さい。

7. 審査結果の発表:
  助成審査委員会(2017年3月上旬開催予定)により審査し、理事会(2017年3月下旬開催予定)
  に答申。結果(助成可否・補助金額)は、4月上旬までに申請者宛連絡します。

                            
以上

 

【以上三事業の申請書等の送付先・問合わせ先】
一般財団法人 山縣記念財団 
〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-10-3 正和ビル5F
TEL:03-3552-6310, FAX:03-3552-6311
E-mail: zaidan@yamagata.email.ne.jp

『海事交通研究』(年報)第65集を発行しました。

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≪序文から≫

 当財団の創始者である山縣勝見は1958年から14年間、日本海洋少年団連盟の会長を務めましたが、その就任挨拶で「日本国民が、祖国日本を守って生きて行くためにはどうしても海に生き、海にその発展の活路を見出すほかはないのであります。(中略)今後この日本海洋少年団をして、諸外国におけるように、海国日本を象徴するにふさわしい立派な国民的団体として発展せしめたい、そしてこの海洋少年団を中心として海洋精神の国民的な盛り上りを期待する運動を展開して行きたい。」と子供たちに広く海のことを知ってほしいという思いを込めた抱負を述べております。

 ほぼ60年も前に山縣勝見が考えていたことが現在ではどの様に受け継がれているのでしょうか。例えば「海の日」の前後には日本船主協会や各海運・造船・港湾会社・商船学校などが子供たちを中心とした青少年や一般の方々を対象に日本各地で外航船や造船所、港湾施設の見学会・体験教室やシンポジウムなどの行事を実施して少しでも海運や船員の重要性を知ってもらう努力を続けています。今では「海の日」だけではなく年間を通して色々なイベントを開催し、その広がりが全国に拡大しています。この様な地道な努力を継続することによって海への理解が更に進むことを切に期待します。

 前述の「海の日」についてですが、その由来を正確に答えられる人がどの位いるでしょうか。海事関連に携わる我々は別にして、子供たちや一般の国民はなかなか的確に答えられないのではないでしょうか。
 ここで一つ提案があります。それは、メディアの力を借りて毎年「海の日」にテレビ・ラジオニュース番組の中で『今日は「海の日」で国民の休日です。1876年明治天皇の東北地方巡幸の際、灯台巡視の汽船「明治丸」によって航海をし、7月20日に横浜港に帰着したことにちなみ1941年に「海の記念日」として制定され、1996年から7月20日が「海の恩恵に感謝し、海洋国家の繁栄を祝う」との趣旨により祝日「海の日」となりました。また、2003年から7月の第3月曜日となり、三連休化されております。なお、明治丸は東京商船学校の練習船として使用され、現在は東京海洋大学 越中島キャンパスに重要文化財として保存されています。』・・・と、この程度の解説をアナウンサーが読み上げる事を是非して欲しいものです。実際に耳と目から入る情報は少なからず皆の記憶に留まるのではないでしょうか。

 さて、今年も『海事交通研究』第65集を皆様にお届けいたします。
 本図宏子氏の「愛媛県海事クラスターにおける集積効果とその発展について」では海事産業が盛んな愛媛県に対象を絞り「海事クラスター」を巡る現状及び政策について、産業連関分析等により考察を行っています。本論文は第64集に日本海事センターの同僚3名共著で寄稿された「海事クラスターの歴史分析」の執筆者の一人による続編です。
 松本守先生の「海運事業者におけるダイバーシティ効果の実証研究」では海運事業者をサンプルに用いて、延べ1,200人を超える取締役の個人データを調査し、コーポレート・ガバナンスの指標の一つと考えられる「取締役会のダイバーシティ」が企業パフォーマンスに与える効果を回帰分析し、海運事業者にとってダイバーシティが有効かどうかを検証しています。
 松尾俊彦先生の「小型内航船の課題と内航業界の構造問題」では近年の内航業界での主課題である船員の高齢化と船舶の高齢化への対応にあたり、7割を占める499G/T以下の小型内航船における船員不足を解消するために、その課題を整理し、何故小型内航船が必要とされるのか、何故運賃や用船料が改善されないのか、更に小型内航船輸送の陸上転換や大型船への転換など効果的な改善策について検討しています。
 水野英雄先生の「日本へのクルーズ客船の寄港とカボタージュ規制」ではより一層の市場の拡大にはクルーズ客船のカボタージュ規制の緩和を行う必要があり、その結果、欧米のようなフライ&クルーズが可能になればインバウンドの増加に貢献し、寄港地への経済波及効果は大きく、地域経済の活性化につながり、また、クルーズ市場が拡大すると指摘しています。
 神田英宣先生の「ギニア湾の海賊対策-国際協力と課題-」では近年海賊が常態化している中西部アフリカのギニア湾の海賊の実態と課題を明らかにし、日本がギニア湾を結ぶ海運を守るためにどのように関与すべきかを念頭に入れながら、沿岸国のみならず国際的な協調の中で、日本が海洋の安定化に注いでいるノウハウを地域のニーズに応じて提供できると示唆しています。
 鈴木暁先生の「食品輸入に関する他法令規制と港湾の検査機能」では近年、増加傾向を辿っているわが国の食品・農産物の輸入の特徴を概観し、食品等の輸入通関業務の際に必要な他法令規制業務についての特徴と意義を考察し、特にわが国の食の安全・安心の観点からTPPとの関連にも言及しています。
 苦瀬博仁先生の「ロジスティクスからみた災害時の緊急支援物資供給とBCPの課題」では、今後想定される大地震に備えるために、災害とロジスティクスについて示したうえで、政府の緊急支援物資供給の課題と企業のBCPの課題を示し、さらに長期的な課題について検討されており、防災対策を考えるうえで貴重な提言となっています。

 この様に海事関連での広範囲にわたる貴重な内容の論文を掲載できましたこと、執筆者の皆様に厚く御礼を申し上げるとともに、来年度も沢山の応募が寄せられることを期待しております。

 最後になりますが、今年は山縣勝見没後40年の年になります。
 そこで当財団のホームページより「山縣勝見の生涯」と、終戦後わずか5年、当時48歳にして日本船主協会会長の職にあった山縣勝見による、日本海運の再建がわが国経済復興の絶対的条件である理由と復興への道筋について記した「日本経済の復興と海運再建の重要性」(1950年3月発行の復刻)を掲載いたしましたので是非お読みいただきたいと思います。

2016年12月
                          一般財団法人 山縣記念財団
                           理事長    小林 一夫

 

 12月21日発行後、海事関連の研究者の皆様や企業、団体並びに公立や大学の図書館に配本しました。関心をお持ちの方は、下記の「お問い合わせフォーム」から、又はお電話にてお申込み下さい。
 又、本誌をお読みになってのご感想・ご意見なども是非お寄せ下さい。       

一般財団法人 山縣記念財団

お問い合わせフォーム
TEL(03)3552-6310

 
≪目次≫
序文 小林 一夫
(山縣記念財団理事長)
愛媛県海事クラスターにおける集積効果とその発展について 本図 宏子
((公財)日本海事センター研究員)
海運事業者におけるダイバーシティ効果の実証研究 松本 守
(北九州市立大学経済学部准教授)
小型内航船の課題と内航海運業界の構造問題 松尾 俊彦
(大阪商業大学総合経営学部教授)
日本へのクルーズ客船の寄港とカボタージュ規制 水野 英雄
(椙山女学園大学現代マネジメント学部准教授)
ギニア湾の海賊対策
-国際協力と課題-
神田 英宣
(防衛大学校防衛学教育学群准教授)
食品輸入に関する他法令規制と港湾の検査機能 鈴木 暁
(元広島商船高等専門学校教授)
ロジスティクスからみた災害時の緊急支援物資供給とBCPの課題 苦瀬 博仁
(流通経済大学流通情報学部教授)
【特集:山縣記念財団創始者 山縣勝見没後40年記念記事】
山縣勝見の生涯~サンフランシスコ講和会議まで~
当財団ホームページから
日本經濟の復興と海運再建の重要性 山縣 勝見
(日本舩主協會會長=当時)

                              
         
 執筆者紹介

 山縣記念財団からのお知らせ 
 

 

                             
 

≪執筆者紹介≫
(掲載順) 

本図 宏子(ほんず ひろこ)
 大阪大学経済学部卒業。London School of Economics修士課程修了(地域経済学専攻)。国際協力銀行を経て、国土交通省入省。2014年より(公財)日本海事センターに出向。研究分野は、公共経済学、海運経済。論文に「LNG輸送の動向とパナマ運河拡張の影響」(共著)、「海事クラスターの歴史分析」(共著、本誌第64集、2015年)、「一帯一路構想下における中国海運業の動向」がある。また、日本海事新聞に「マレーシアの海運事情と拡大する中国の影響」、「中国ワールド・シッピング・サミットに参加して~経済減速期における中国海運業界の動向~」(2015年)、「中国海運業発展のキーワードは「連携強化」-新生COSCO初主催のワールド・シッピング・サミット参加報告」(2016年)等を寄稿している。日本海運経済学会所属。

松本 守(まつもと まもる)
 九州大学大学院経済学府博士後期課程を単位取得退学の後、九州大学博士(経済学)を取得。九州産業大学商学部専任講師を経て、現在、北九州市立大学経済学部准教授。専攻はコーポレート・ファイナンス、コーポレート・ガバナンス。主要論文は、「海運事業者のコーポレート・ガバナンスと企業パフォーマンス」(共著、2016年日本海運経済学会「学会賞・論文の部」を受賞)、「ソフトな予算制約問題と第三セクターのパフォーマンス-運輸分野を対象とした実証分析-」(共著、2014年日本交通学会「学会賞・論文の部」を受賞)、や“The dark side of independent venture capitalists: Evidence from Japan”(共著)など。所属学会は、日本海運経済学会、日本交通学会、公益事業学会、日本ファイナンス学会、日本経営財務研究学会、日本ディスクロージャー研究学会など。

松尾 俊彦(まつお としひこ)
 東京商船大学大学院商船学研究科博士後期課程修了。広島商船高専助教授、富山商船高専助教授、東海大学海洋学部教授を経て、現在、大阪商業大学総合経営学部教授。博士(工学)。専門分野は物流論(インターモーダル輸送、内航海運)。海運へのモーダルシフトの研究を進める中、港湾のあり方にも関心を持つ。近年の論文として「内航海運における船舶管理の在り方に関する一考察」、「内航海運における船員不足問題の内実と課題」、「内航RORO船・フェリー市場の棲み分けと競争に関する一考察」などがある他、『内航海運』、『交通と物流システム』などの共著作がある。当誌には、「日本の港湾政策に関する一考察」(第59集、2010年)、「内航コンテナ輸送の拡大に関する一考察」(共著、第63集、2014年)と過去に2度寄稿。2007年日本物流学会賞受賞。日本物流学会、日本港湾経済学会、日本海運経済学会、日本交通学会、日本航海学会、日本沿岸域学会、IAME、内航海運研究会所属。

水野 英雄(みずの ひでお)
 名古屋大学大学院経済学研究科博士課程後期課程経済学専攻退学。愛知教育大学教育学部助手、講師、准教授を経て、現在は、椙山女学園大学現代マネジメント学部並びに大学院現代マネジメント研究科准教授。専門は、国際経済学、経済政策、貿易政策、教育政策、経済教育で、海事関連では「アジアにおけるクルーズ客船市場」を研究テーマとし、主要論文に「中部地域の観光産業における名古屋港の役割-クルーズ客船による経済波及効果-」があるほか、農産物貿易、経済教育や教員養成などに関する多数の著書、論文、研究・教育活動がある。2013年第1回経済教育学会賞(教育実践部門)受賞。所属学会は、日本経済学会、日本経済政策学会、日本国際経済学会、経済教育学会、日本グローバル教育学会、経済教育ネットワーク、金融経済教育研究会、応用観光研究会、日本観光学会、日本港湾経済学会中部部会、日本人口学会。

神田 英宣(かんだ ひでのぶ)
 慶応義塾大学理工学部卒業。民間企業を経て海上自衛隊入隊。艦艇勤務(護衛艦、砕氷艦、輸送艦)、海上自衛隊幹部候補生学校教官、防衛庁防衛政策局BMD研究室、統合幕僚会議事務局第5室、海上幕僚監部防衛部、第1術科学校生徒隊長、防衛研究所政策研究部を経て、2013年から防衛大学校防衛学教育学群戦略教育室准教授。専門分野は海洋安全保障。主な論文に、「中西部アフリカの海洋安全保障-沿岸諸国と欧米の戦略目標の実行-」、「インドの海洋安全保障-インド洋ブルーウォーター戦略の課題」、「島嶼をめぐる安全保障-英亜の対立再燃と今後の動向」、「フランスの南太平洋戦略-海洋をめぐる地域安定の役割」がある。所属学会は国際安全保障学会、日本防衛学会、日本島嶼学会。

鈴木 暁(すずき ぎょう)
 法政大学社会学部卒業。神奈川大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。(財)日本関税協会、(財)港湾労働経済研究所、東芝情報システム㈱勤務の後、広島商船高等専門学校で助教授、教授を経て、その後、港湾職業能力開発短期大学校で定年まで教鞭をとり、同退職後は日本大学商学部、中央大学商学部、静岡産業大学で非常勤講師を務めた。『国際物流の理論と実務』(単著)、『現代物流概論』、『現代の内航海運』(以上共著)などの著書及び「フォワーダーの限界と可能性」、「海貨業における3PL導入の可能性と課題」、「港湾管理権をめぐる国と地方自治体」、「輸入穀物の港湾検査とTPP」、「海貨業の現状と課題−総合物流業へ向けて」(当誌第57集、2008年)などの論文がある。所属学会は、日本港湾経済学会、日本海運経済学会、日本物流学会、日本貿易学会。元山縣記念財団評議員。

苦瀬 博仁(くせ ひろひと)
 早稲田大学大学院理工学研究科博士課程(建設工学専攻)修了。工学博士。日本国土開発㈱技術研究所研究員、東京商船大学商船学部助教授、教授、東京海洋大学海洋工学部教授(2009年~2012年まで理事・副学長)を経て、2014年より同大学名誉教授、流通経済大学流通情報学部教授。専門分野は、ロジスティクス、物流、流通システム、交通計画、都市交通計画、物流施設計画、物流の歴史的分析等。主著は『ロジスティクスの歴史物語』(2016年住田物流奨励賞)、『都市の物流マネジメント』(2007年日本物流学会賞)、『ロジスティクス概論』など。政府・自治体の審議会、外国招待講演、国際会議や政府・国際援助機関への技術協力等にも多数参加。所属学会は、日本物流学会(前会長)、日本計画行政学会(副会長)、日本都市計画学会、日本沿岸域学会、土木学会、日本航海学会、日本海運経済学会等。2007年より山縣記念財団評議員。
(敬称略)

「第44回我ら海の子展」を後援しました。

「第44回我ら海の子展」(主催 一般財団法人サークルクラブ協会、公益社団法人日本海洋少年団連盟)の授賞式が2016年8月19日ホテル・ニューオータニ(東京)にて開催され、当財団は後援団体として参加しました。
2015年度までは、未就学児、小学生を対象としていましたが、2016年度からは「全国中学生海の絵画コンクール」と統合し、中学生も対象となり、全国の子供達から10,468点の応募がありました。
その内、国土交通大臣賞2作品(中学生の部、小学生以下の部)はじめ、主催者、後援者、個人審査員による特別賞、金賞、銀賞並びに東日本大震災を機に創設された「がんばろう日本賞」の合計60作品に各賞が贈られました。

(※以下の写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。)

集合写真
特別審査員の一人 さかなクンを囲んで
「第44回我ら海の子展」授賞式後の集合写真
2016.8.19 於ホテル・ニューオータニ(東京)


山縣記念財団理事長賞には東京都の中学3年生、牧 美紗穂(まき みさほ)さんの絵画「大好きな場所」が選ばれ、当財団小林理事長より牧さんに賞状が贈られました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA   山縣記念財団理事長賞授与

 


 
今後、受賞作品展示発表会が全国を巡回予定です。
展示会の日程は、以下の通りです。
・ 8月 4日(木)~ 8月30日(火)銀座ギャラリー(東京メトロ銀座駅・日比谷駅間の地下通路)
・ 9月 5日(月)~ 9月16日(金)国土交通省1階ロビー(平日のみ)
・11月 3日(木・祝)~11月30日(水)アクアマリンふくしま

2016年山縣勝見賞贈呈式開催

当財団が海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰するために、2008年に創設した「山縣勝見賞」は本年第9回目を迎え、7月22日(金)「2016年山縣勝見賞」の贈呈式を、海運クラブにて開催致しました。

2016年山縣勝見賞受賞者

「2016年山縣勝見賞」贈呈式における受賞者記念撮影 2016年7月22日 於海運クラブ
左から 森 隆行氏(特別賞)、伊藤玄二郎氏(特別賞)、井上欣三氏(功労賞)、
旭 聡史氏(論文賞)、関根 博氏(著作賞)
(写真をクリックすると大きくなります。)

2016年山縣勝見賞贈呈式全員

同贈呈式における参加者全員による記念撮影 
前列受賞者
(写真をクリックすると大きくなります。)

 受賞者、受賞者略歴、受賞理由は以下の通りです。

≪著作賞≫

(株)日本海洋科学著、関根 博 監修 『実践航海術』
 (成山堂書店 2015年9月刊)

受賞者概要/略歴:
 (株)日本海洋科学は、自社開発の操船シミュレータを中心に、船舶の航行安全対策をはじめとする海事コンサルティング、船舶の安全運航に関する検船業務、BTM/BRM訓練や各種操船訓練、ECDIS(電子海図表示装置)訓練などを初めとする海事教育業務など、国内を代表する海や船に関わる海事総合コンサルタントである。2015年創業30周年を迎えたのを機に、現役の船長・航海士を含む社員約40名が分担し、本書を執筆した。
 監修者関根博氏は、1976年東京商船大学卒業、日本郵船(株)入社後、航海士、船長、シンガポール法人ジェネラルマネージャー、安全環境グループ長、経営委員、常務経営委員等を経て、現在、日本海洋科学社長、東京海洋大学非常勤講師、神戸大学客員教授等。

受賞理由:
 本書は、現在の外航船の現場である船橋において、どのようなシステムおよび基準が存在し、それらが船舶の安全運航の達成に向けてどのように運用されているかを、特に実務面を重視しつつトータルにまとめた日本初のテキストである。航海計画に始まり、ブリッジ・チーム・マネジメント、ECDIS、ウェザールーティングなど、船長、航海士が心得るべきこと、実践すべきことを、「暗黙知」などもふくめてグローバルスタンダードな視点から、理論に偏ることなく実務に即して横断的に整理。まさに現役の外航船船長、航海士のバイブル的著書として高く評価できる。

 

≪論文賞≫

旭 聡史 著 「海上物品運送人の定額賠償制度に関する研究」
 (早稲田大学大学院法学研究科 博士学位論文 2014年7月)

受賞者略歴:
 1999年京都大学法学部卒業。電気機器、医薬品事業会社を経て2007年川崎汽船(株)入社。現在企業法務リスク・コンプライアンス統括グループ公正競争推進チーム長。2011年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。2014年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了、今回受賞論文により博士(法学)取得。
 
受賞理由:
 本論文では、海上物品運送人の損害賠償責任範囲について、定額賠償の規定と言われる商法580条や国際海上物品運送法12条の2の規定との関係性、或いは商法580条と民法416条の関係性について考察するために、ローマ法のレケプツム責任にまで淵源を辿り、更にイギリス、ドイツなどの諸外国の法やハーグ・ウィスビー・ルールを始めとする国際条約の対応する規定を比較・検討する作業を通じ、従来の学説の不備な点を補足した画期的な論文として高く評価したい。

 

≪功労賞≫
井上欣三氏

受賞者略歴:
 1968年神戸商船大学航海学科卒業、日本郵船(株)入社。神戸商船大学で商船学修士、京都大学で工学博士を取得。神戸商船大学副学長、神戸大学海事科学部学部長等を歴任し、現在、神戸大学名誉教授。

受賞理由:
 主に、海上交通工学、港湾計画、操船に関する分野において安全評価、安全管理に関する技術開発を中心に多くの業績を残し、日本航海学会優秀論文賞受賞7編、TransNav2007国際会議においてベストペーパー賞、日本船舶海洋工学会関西支部長賞(2009年)、住田正一海事奨励賞(2011年)を受賞。現在は「災害時医療支援船構想」の実現を日本の医療界(医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会)、透析医療界と連携して取り組んでいる。

 

≪特別賞≫
氷川丸ものがたり製作委員会(代表:かまくら春秋社社長 伊藤玄二郎)製作
長編アニメ映画「氷川丸ものがたり」(2015年8月上映)

受賞者概要/略歴:
 氷川丸ものがたり製作委員会は、本アニメ映画の製作のために、『氷川丸ものがたり』原作者、伊藤玄二郎氏が中心となって起ち上げた。
 代表の伊藤氏は、エッセイスト、編集者。中央大学法学部卒業。1970年(株)かまくら春秋社を設立。ポルトガル国立リスボン工科大学客員教授、早稲田大学客員教授、関東学院大学教授等を経て星槎大学教授。
 

受賞理由:
 日本郵船の氷川丸は、米シアトル航路の大型貨客船として1930年竣工し、太平洋戦争中は病院船、戦後は復員船、引揚げ船として、更には再度貨客船として運航し、1960年引退、以後は横浜港山下公園地先に係留され、昭和の歴史の「語り部」として今なおその姿をとどめ、2016年3月には、国の重要文化財に指定されることになった。
 戦後70年、建造後85年に当たる2015年、『氷川丸ものがたり』(伊藤玄二郎著)が発行され、同時に本書をもとに、長編アニメ映画(虫プロダクション制作、監督:大賀俊二)が製作され、全国で公開されたことは、海事振興に大きく寄与し、意義深いものと認められる。

 

≪特別賞≫
森 隆行 著 『神戸港 昭和の記憶 仕事×ひと×街』
 (神戸新聞総合出版センター 2014年11月刊)

受賞者略歴:
 1975年大阪市立大学商学部卒業、大阪商船三井船舶(株)入社。大阪支店輸出二課長、広報課長、営業調査室室長代理、AMT freight GmbH(Deutscheland)社長、(株)商船三井営業調査室主任研究員等を歴任、東京海洋大学海洋工学部講師、青山学院大学経済学部講師を兼務の後、2006年流通科学大学商学部教授に就任。神戸大学海事科学研究科客員教授、タイ王国マエファルーン大学特別講師を兼務。

受賞理由:
 昭和30~40年代活気で満ちあふれていた神戸港を活写した本書は、岸壁から沖の停泊船まで頻繁に行き交う艀やタグボート、気性は荒くても人情あふれる男たち、そして街を闊歩する外国人船員など、かつての神戸港のにぎわいを演出したさまざまな仕事に従事した人々を探し出して直接取材し、完成させた。神戸を愛する全ての人々に大きな励ましを送っている書といえる。
                                                        以上

2016年山縣勝見賞受賞者決定

 当財団は、2008年に設立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海運を中心とする海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果(著作・論文)や業績を対象として表彰する制度を発足しましたが、このほど「2016年山縣勝見賞」の受賞者が下記の通り決定しましたので、お知らせ致します。
 なお受賞者への贈呈式は7月22日(金)海運クラブにて行います。

≪著作賞≫

(株)日本海洋科学著、関根博監修 『実践航海術』
 (成山堂書店 2015年9月刊)

受賞者概要/略歴:
 (株)日本海洋科学は、自社開発の操船シミュレータを中心に、船舶の航行安全対策をはじめとする海事コンサルティング、船舶の安全運航に関する検船業務、BTM/BRM訓練や各種操船訓練、ECDIS(電子海図表示装置)訓練などを初めとする海事教育業務など、国内を代表する海や船に関わる海事総合コンサルタントである。2015年創業30周年を迎えたのを機に、現役の船長・航海士を含む社員約40名が分担し、本書を執筆した。
 監修者関根博氏は、1976年東京商船大学卒業、日本郵船(株)入社後、航海士、船長、シンガポール法人ジェネラルマネージャー、安全環境グループ長、経営委員、常務経営委員等を経て、現在、日本海洋科学社長、東京海洋大学非常勤講師、神戸大学客員教授等。

受賞理由:
 本書は、現在の外航船の現場である船橋において、どのようなシステムおよび基準が存在し、それらが船舶の安全運航の達成に向けてどのように運用されているかを、特に実務面を重視しつつトータルにまとめた日本初のテキストである。航海計画に始まり、ブリッジ・チーム・マネジメント、ECDIS、ウェザールーティングなど、船長、航海士が心得るべきこと、実践すべきことを、「暗黙知」などもふくめてグローバルスタンダードな視点から、理論に偏ることなく実務に即して横断的に整理。まさに現役の外航船船長、航海士のバイブル的著書として高く評価できる。

 

≪論文賞≫

旭聡史著 「海上物品運送人の定額賠償制度に関する研究」
 (早稲田大学大学院法学研究科 博士学位論文 2014年7月)

受賞者略歴:
 1999年京都大学法学部卒業。電気機器、医薬品事業会社を経て2007年川崎汽船(株)入社。現在企業法務リスク・コンプライアンス統括グループ公正競争推進チーム長。2011年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。2014年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了、今回受賞論文により博士(法学)取得。
 
受賞理由:
 本論文では、海上物品運送人の損害賠償責任範囲について、定額賠償の規定と言われる商法580条や国際海上物品運送法12条の2の規定との関係性、或いは商法580条と民法416条の関係性について考察するために、ローマ法のレケプツム責任にまで淵源を辿り、更にイギリス、ドイツなどの諸外国の法やハーグ・ウィスビー・ルールを始めとする国際条約の対応する規定を比較・検討する作業を通じ、従来の学説の不備な点を補足した画期的な論文として高く評価したい。

 

≪功労賞≫
井上欣三氏

受賞者略歴:
 1968年神戸商船大学航海学科卒業、日本郵船(株)入社。神戸商船大学で商船学修士、京都大学で工学博士を取得。神戸商船大学副学長、神戸大学海事科学部学部長等を歴任し、現在、神戸大学名誉教授。

受賞理由:
 主に、海上交通工学、港湾計画、操船に関する分野において安全評価、安全管理に関する技術開発を中心に多くの業績を残し、日本航海学会優秀論文賞受賞7編、TransNav2007国際会議においてベストペーパー賞、日本船舶海洋工学会関西支部長賞(2009年)、住田正一海事奨励賞(2011年)を受賞。現在は「災害時医療支援船構想」の実現を日本の医療界(医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会)、透析医療界と連携して取り組んでいる。

 

≪特別賞≫
氷川丸ものがたり製作委員会(代表:かまくら春秋社社長 伊藤玄二郎)製作
長編アニメ映画「氷川丸ものがたり」(2015年8月上映)

受賞者概要/略歴:
 氷川丸ものがたり製作委員会は、本アニメ映画の製作のために、『氷川丸ものがたり』原作者、伊藤玄二郎氏が中心となって起ち上げた。
 代表の伊藤氏は、エッセイスト、編集者。中央大学法学部卒業。1970年(株)かまくら春秋社を設立。ポルトガル国立リスボン工科大学客員教授、早稲田大学客員教授、関東学院大学教授等を経て星槎大学教授。
 

受賞理由:
 日本郵船の氷川丸は、米シアトル航路の大型貨客船として1930年竣工し、太平洋戦争中は病院船、戦後は復員船、引揚げ船として、更には再度貨客船として運航し、1960年引退、以後は横浜港山下公園地先に係留され、昭和の歴史の「語り部」として今なおその姿をとどめ、2016年3月には、国の重要文化財に指定されることになった。
 戦後70年、建造後85年に当たる2015年、『氷川丸ものがたり』(伊藤玄二郎著)が発行され、同時に本書をもとに、長編アニメ映画(虫プロダクション制作、監督:大賀俊二)が製作され、全国で公開されたことは、海事振興に大きく寄与し、意義深いものと認められる。

 

≪特別賞≫
森隆行著 『神戸港 昭和の記憶 仕事×ひと×街』
 (神戸新聞総合出版センター 2014年11月刊)

受賞者略歴:
 1975年大阪市立大学商学部卒業、大阪商船三井船舶(株)入社。大阪支店輸出二課長、広報課長、営業調査室室長代理、AMT freight GmbH(Deutscheland)社長、(株)商船三井営業調査室主任研究員等を歴任、東京海洋大学海洋工学部講師、青山学院大学経済学部講師を兼務の後、2006年流通科学大学商学部教授に就任。神戸大学海事科学研究科客員教授、タイ王国マエファルーン大学特別講師を兼務。

受賞理由:
 昭和30~40年代活気で満ちあふれていた神戸港を活写した本書は、岸壁から沖の停泊船まで頻繁に行き交う艀やタグボート、気性は荒くても人情あふれる男たち、そして街を闊歩する外国人船員など、かつての神戸港のにぎわいを演出したさまざまな仕事に従事した人々を探し出して直接取材し、完成させた。神戸を愛する全ての人々に大きな励ましを送っている書といえる。
                                                        以上