2019年山縣勝見賞贈呈式開催

 当財団が海事交通文化の研究及び普及・発展に貢献された方々を顕彰するために、2008年に創設した「山縣勝見賞」は本年第12回目を迎え、7月19日(金)「2019年山縣勝見賞」の贈呈式を、海運クラブにて開催致しました。

「2019年山縣勝見賞」贈呈式における受賞者記念撮影 2019年7月19日 於海運クラブ
左から丹羽 康之氏(論文賞)、富田 昌宏氏(功労賞)、海部 陽介氏(特別賞)、野間 恒氏(特別賞)
(写真をクリックすると大きくなります。)

 受賞者、受賞者略歴、受賞理由は以下の通りです(敬称略)。

≪著作賞≫

 該当者なし
                                        

≪論文賞≫

丹羽 康之(にわ やすゆき)著「海上無線通信を活用した船舶の位置情報共有に関する研究」
(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科/応用環境システム学専攻 博士学位論文2018年3月)

受賞者略歴
 1971年生まれ。東京都立大学工学部機械工学科卒業。東京工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。1997年運輸省船舶技術研究所(現・海上技術安全研究所)入所。以降、船舶運航の安全、海上無線通信の活用に係る研究に従事。2006年以降、国際海事機関(IMO)無線通信・捜索救助(COMSAR)小委員会、航行安全(NAV)小委員会、航行安全・無線通信・捜索救助(NCSR)小委員会に日本代表団の一員として出席。2017年より国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所知識・データシステム系上席研究員。2018年東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。発表論文として「指向性アンテナを用いた船間無線LAN通信実験」(『日本航海学会論文集』第126号)など。

受賞理由
 永遠の課題である船舶衝突予防の問題を、海上での情報通信技術、クラウドサービスなどを駆使して考察した最先端の研究であり、AISを搭載していない小型船舶にスマートフォン機能から位置情報を入手できる可能性を指摘するなど、有用性もあり画期的な提言を含む論文と評価する。
                                                        

≪功労賞≫

富田 昌宏(とみた まさひろ)(神戸大学名誉教授)

受賞者略歴
 1947年生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了。岡山商科大学商学部助教授、神戸大学経済経営研究所教授、附属企業資料総合センター長等を歴任、現在、神戸大学名誉教授。研究分野は、イギリスを中心とするヨーロッパにおける近代海運の発展過程、企業史料分析。

受賞理由
 神戸大学大学院で佐々木誠治教授の指導を受け海運史研究の道に進み、長年にわたり神戸大学等にて教鞭を執り我が国の海運・港湾・物流等に関する学術研究に注力された。その間、日本海運経済学会の事務局を担当して事務局長、副会長を務め学会の発展と有為の人材育成に貢献した。神戸大学においては新聞記事文庫のデジタル化公開を推進し、企業資料の収集・分析・公開を行う組織整備に尽力した。
                                                        

≪特別賞≫

海部 陽介(かいふ ようすけ)(人類進化学者、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」代表)

受賞者略歴
 1969年生まれ。東京大学理学部卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退、国立科学博物館に就職。理学博士。化石などから約200万年におよぶアジアの人類進化・拡散史を研究している。現在、国立科学博物館 人類研究部人類史研究グループ長。著書・監修書に『日本人はどこから来たのか』(2016年文藝春秋;古代歴史文化賞)、『人類がたどってきた道』(2005年NHKブックス)、『我々はなぜ我々だけなのか』(2017年講談社;科学ジャーナリスト賞・講談社科学出版賞)など。第9回(2012年度)日本学術振興会賞受賞。2016年にクラウドファンディングを成功させて「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を開始。
 2019年7月、旧石器時代の石器で木をくりぬいて作った丸木舟を男女5名が漕いで、台湾から与那国島への渡航に成功し、最初の日本列島人の渡航の実態解明に大きく貢献した。

受賞理由
 上記プロジェクトのリーダーを務め、候補となる古代舟を実際に造り、近海で実験を繰り返して、最初の日本列島人が海洋ルートで渡来した様子を再現することにより、人類最古段階の本格的海洋進出の実態解明に貢献した。綿密な人類史の学術研究に裏付けられた、こうした実証実験に至る構想力と、チームを組織してプロジェクトに挑む果敢な行動力・指導力、また、本プロジェクトの推進を通じて海事交通文化の発展に寄与したことを評価する。
                                                        

≪特別賞≫

野間 恒(のま ひさし)(海事史家)

受賞者略歴
 1933年生まれ。慶応義塾大学経済学部(交通経済専攻)卒業。大阪商船(現・商船三井)入社後、約半世紀にわたり海運業界に身を置き、九州急行フェリー㈱社長を経て、現在は海事史家として海事関係の図書を多数執筆。『豪華客船の文化史』(1993年NTT出版)、『商船が語る太平洋戦争』(2002年私家版)でそれぞれ住田正一海事奨励賞、『商船三井船隊史』(2009年自家刊行)で住田正一海事史奨励賞を受賞。その他の主な著書に、『客船・昔と今』(1974年出版協同社)、『船の美学』(1982年舵社)、『客船の時代を拓いた男たち』(2015年成山堂書店)、『客船の世界史』(2018年潮書房光人新社)がある。

受賞理由
 約半世紀にわたり海運業界に身を置き、会社員生活のかたわら、商船や客船・客船史に関する多数の著書を著わすなど、長年の研究を通じて、広く海事交通文化の発展に貢献してきた。

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